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アルゼンチンの中間選挙から一夜。与党「自由の前進（LLA）」が全土で第1党となり、ハビエル・ミレイ大統領は2025年10月27日、改革路線の継続に向け支持を求めた。残り任期は2年。閣僚の一部交代を示唆し、交渉で法案成立を図る構えだ。市場はペソと株の急伸で応じ、政治と経済の歯車がかみ合うかが問われる局面である。
票が示した風向きが変わる
投票日となった2025年10月26日、首都でも地方でも投票所の前に途切れない列が続いた。今回は下院127議席と上院24議席の改選で、紙の統一様式「ボレタ・ウニーカ」の全国導入が初めて本格運用された。政党名と候補者名が1枚に並ぶ新様式は、無効票の抑制と集計の明確化を狙うものだ。制度変更の初回でトラブルも懸念されたが、運営は概ね落ち着いていたと映る。
選挙管理当局の速報では、LLAの得票率が40.68％、最大野党の正義党（ペロン党）連合が31.69％となり、ミレイ政権は中間審判で主導権を保ったとみられる。最終確定は各州の開票作業を経るが、全体の流れは「改革を続けよ」という有権者のメッセージを刻む。立法の議席分布が変わることで、政権の攻め筋と守り筋の組み立てに現実味が増す局面である。
ミレイ氏の次の一手が見える
2025年10月27日、ミレイ氏はテレビ出演で「約束した法案を交渉し成立させるために新内閣をつくる必要がある」と述べ、与野党の知事や議員との連携に踏み込む姿勢を示した。「最悪の局面は過ぎた」と強調し、足りない票は交渉で積み上げると語った。声の調子は上ずらず、勝利の昂揚よりも次の構図づくりに焦点を当てた口ぶりである。
改編の期限は長くない。新議員が就任する12月10日までに布陣を固め、労働、年金、税制の再設計を一気に動かす構えだ。過半を単独で握らない現実は変わらないが、折衝の扉を広げれば法案の柱を通す余地は増える。強い対決の物語から、項目ごとに合意を探る細やかな政治へ。政権の作法が試される時間が始まっている。
市場は先に走り、期待と警戒が交錯する
27日朝の取引では、通貨ペソが対ドルで一時10％上昇し、1ドル＝1355ペソ台を付ける場面があったとの報が流れた。主要株価指数は終日で20％近い上げを演じ、勝利判明からの買い戻しが一気に膨らんだ格好である。為替と株式の反応は、政治が前に進むという見立てへの先回りだが、短期資金の往来が激しい局面でもある。
足元の為替市場は公定と自由、複数のレートが併存する特殊な地形である。数字は見出しとして派手でも、物価や国債需給、外貨準備の積み上がりが伴わなければ熱は長く持たない。賃金と年金の実質回復に道筋が見えるか。価格制度の平準化をどう段階付けるか。市場の拍手は早いが、次の判断は実務の速度で更新される。
残り2年をどう使うか
今回の結果で、政権は「改革の継続」という政治的な追い風を得た。ただし議会の算術はなお厳しく、項目ごとに協力の輪を広げる以外に道は細い。労働規制の見直しは雇用の強さと働き手の安心の両立が鍵で、年金は持続性と公平の調和が求められる。税制は投資の呼び水と財政健全化の両面から設計が必要だ。
政権が対話の場へ歩み寄れるか、有権者はそこを見ている。強硬か柔軟かという二項対立ではなく、落とし所を丁寧に探る政治に支持が集まる光景が浮かぶ。街角の会話はもう選挙の勝ち負けから離れつつある。暮らしが良くなるのか、いつからなのか。小さな問いが積み上がり、次の評価軸を形づくっていくはずだ。
