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秋晴れの散歩道に緊張が走った。2025年10月18日午後、群馬県みなかみ町でクマによる人身被害が相次ぎ、キノコ採りの男性が重傷、犬の散歩中の女性が軽傷を負った。町内で同日に二件、現場は約8キロ離れており、同一個体かは不明だ。生活圏のすぐ脇で起きた連続被害は、山の季節と人の暮らしの接点を静かに問いかけている。
同じ日の町内で相次いだ2件の被害
2025年10月18日 13:30ごろ、みなかみ町羽場の沢沿いで、近くの森林に入ってキノコを採っていた64歳の男性がクマに襲われた。頭や鼻、あごを爪でひっかかれ、救急搬送されたが意識はあり、重傷とみられる。通報は男性の妻からで、現場は自宅近くの山際に開けた斜面だったとされる。
およそ2時間半後の16:00ごろ、町の北側に位置する高日向の路上で、犬の散歩をしていた70代の女性が成獣とみられるクマに襲われた。女性は耳や尻をかまれたが、搬送時はいずれも意識があり、けがは軽いとみられる。二つの現場は直線で約8キロ離れ、同一個体か別個体かは現時点で断定できないと映る。
県警や消防は周辺の見回りを強め、外出時の注意を呼びかけている。山裾の生活道路や河川沿いでの目撃が続き、住宅地と山の境目が薄くなる夕暮れ時に緊張が高まる。犬のリードを短く持つ人、足早に帰路を急ぐ人の姿が広がっており、暮らしのリズムにさざ波が立っているとみられる。
広がる不安と、秋の山で何が起きているのか
みなかみ町では、2025年10月13日 6:00ごろにも下津で散歩中の高齢夫婦がクマに襲われ、男性は手の指、女性は腕や太ももをかまれていずれも軽傷を負った。現場付近では別個体とみられるもう一頭の存在も確認され、2頭が西へ逃げたとの証言がある。生活圏の直近での遭遇が目立つ構図だ。
同13日の現場から約3キロ離れた商業施設でも7日に被害が出ており、短期間に複数の地点で接触が生じている。現時点で確認されている範囲では、早朝と午後の時間帯に人的活動とクマの行動が重なりやすいと映る。学校の通学路や買い物の往復など、日常の動線と山の縁が交差する点がにわかに浮かぶ。
秋は木の実が熟し、人と野生動物の活動域が近づく季節でもある。山の実りに誘われたクマが谷筋や沢沿いを下り、集落周辺へ現れる事例が各地で報じられているが、個体の年齢や経験、人の行動次第で遭遇の危険度は変わる。出会い頭の驚愕が攻撃行動を誘発する場面もあり、距離の取り方が要となる。
住民の備えと行政の対応
群馬県は2025年4月23日に関係機関を集め、近年の出没状況と対応マニュアルの共有、今後の取り組みを確認する会議を開いた。市町村職員や県警も参加し、地域ごとの情報連携や住民への注意喚起の徹底が図られている。今回の相次ぐ被害でも、現場周辺の見回りや注意情報の発信が進むとみられる。
一方で、最前線に立つのは日々の暮らしを営む住民である。単独で山へ入らない、鈴やラジオで存在を知らせる、見通しの悪い藪や沢沿いを避ける、生ごみや収穫物を屋外に放置しないといった基本を重ねることが、遭遇の芽を小さくする。犬の散歩は明るい時間帯を選び、リードを短く保つ配慮が要る。
被害が起きた直後は、むやみに現場へ近づかず、行政や警察の情報に基づいて行動するのが肝要だ。必要に応じて学校の集団下校や地域の見守りを増やし、山仕事やレジャーは予定の見直しも検討したい。暮らしの足元に野生が近づく今、恐れと共存の間で、地域が知恵を寄せ合う時間が続いている。
