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27日の夕刻、宮城県内の自民党会館に集まった常任役員たちの表情は硬かった。知事選で落選した和田政宗氏が、党籍を残したまま参政党と政策覚書を交わし、全面支援を受けて戦った経緯に「事前の相談がなかった」との不満が噴き出したためだ。会合は、県連としてのけじめをどのように示すのかという一点に収れんしつつある。
県連会合の焦点は「無断連携」と説明責任
27日に開かれた常任役員会では、和田氏が参政党と連携する方針を県連に相談せず進めたことを問題視する声が相次いだと関係者は語る。会場には、選挙後の後始末に追われる地方議員や支援者の姿もあり、「なぜ事前に共有されなかったのか」という苛立ちが空気を支配したと映る。問いは一つ、誰がどのように責任を取るのかである。
現時点で確認されている範囲では、会合では和田氏本人からの説明を求めるべきだとの意見が強く、県連会長の小野寺五典氏と幹事長に対応を一任することで一致したという。処分を含む対応の検討に入ったとの報も27日夜に流れ、県連が近く一定の判断を示す段取りが固まりつつある。緊張感はなお続いているとみられる。
背景には、組織の統制を乱したとの受け止めがある。与野を越えた選挙協力自体は珍しくないが、党所属のまま別の政治団体と覚書を交わし、全面支援を得る手法は、地方組織の理解を得にくい。今回の協議は、顧問として県連に名を連ねる和田氏の位置づけにも直結し、のちの党内運営に影を落としかねない重みを帯びている。
参政党との覚書と知事選の結果が残したもの
知事選に先立ち、和田氏は参政党と政策協力の覚書を交わし、同党からの応援を受ける態勢を整えた。選挙期間中の発信でも、参政党との共闘を前面に掲げるハッシュタグが並び、街頭での支援演説が繰り返されたことがうかがえる。選挙戦術としての相乗りは話題を集めたが、党籍との整合性を巡る議論は避けられない構図だったといえる。
一方、26日に投開票が行われた知事選では、無所属現職の村井嘉浩氏が6選を果たし、和田氏は及ばなかった。長期政権への批判票の掘り起こしを狙ったものの、参政党支援の効果は限定的だったとの分析が広がっている。選挙の現場ではSNS上の中傷や虚情報も渦巻き、議論の質をどう担保するかという課題も露呈した格好だ。
この結果は、戦術としての「外部連携」が万能ではない現実を示したとも映る。支持拡大の新機軸としては一定のインパクトを残したが、組織内の理解やガバナンスと両立させる設計がなければ、選挙後に大きな揺り戻しを生む。県連の反発が強まった根っこには、そうした「手続きの軽視」への違和感が横たわっている。
迫られる判断、問われるガバナンス
県連が小野寺氏らに一任したことで、今後は和田氏への事情聴取や覚書の経緯確認が進み、党紀上の評価が下される流れになるとみられる。顧問職の扱いを含めて結論を急ぐべきだとの声もあり、判断のタイミングが注目される。拙速への警戒と、求められる説明責任の両立をどう図るかが、最初の関門になる。
今回の一件は、地方組織が直面する二律背反を浮かび上がらせた。選挙で勝つための柔軟な連携は必要だが、党としての信頼は統治と透明性に根ざす。県連がどのラインに線を引くのかは、次の地方選や国政選に向けた足腰に直結する。和田氏の説明と県連の最終判断は、県内政治の作法を映す鏡になるだろう。
一部報道によれば、27日には「処分検討」に踏み込んだとの情報が示された。事実関係の最終確認や本人の弁明機会はこれからだが、県連として何らかの判断を示す流れは避け難い。混迷の選後処理を越えて、次の選挙へ向けた関係再構築の道筋をどう描くのか。地方政治の成熟度が静かに試されている。
