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担当職員が解除の操作を終えて間もなく、試験海域では作動確認が続いていた。第11管区海上保安本部（那覇市）は2025年11月9日、宮古島沖で実施した巡視船の20ミリ機関砲の発射試験に関し、地域航行警報などを終了前に解除していたと明らかにした。周辺に船舶の航行はなく、被害は確認されていないとしている。
警報解除の経緯
試験は2025年11月8日、宮古島の西北西約40kmの海域で実施された。第11管は前日の7日に、無線放送による地域航行警報や「海の安全情報」（海上保安庁の緊急情報配信サービス）で周知していた。当日は午前のうちに解除手続きが進んだが、現場では作業が続いていたため、内部の確認で不一致が見つかった。
当日の工程は大きく2段階で、まず機関砲の動作試験、続いて海上標的への命中精度確認が行われた。担当職員は前者の終了時点で全試験が終わったと誤認し、解除連絡を進めたという。解除後も作業音や航跡の監視で継続が把握され、海域内の安全確認と情報の整合が図られた。
第11管の坂本誠志郎本部長は「重く受け止め、皆様に不安を抱かせることのないよう再発防止に努める」とのコメントを出した。結果として周辺船舶の航行は確認されず、影響は生じていない。だが、情報の切り替えと現場の進行がずれた事実は、運用手順の設計を見直す契機になる。
試験海域の周知と仕組み
第11管は事前に水路通報で、宮古島西北西の座標を中心とする半径5海里の範囲で射撃試験を予定し、予備日を含めた時間帯を示していた。信号旗の掲揚や警戒船の配備といった目視のサインも組み合わせ、海域に近づく船舶へ多層的に注意喚起する仕立てである。広く知らせ、近づかせないための基本線は整えられていた。
地域航行警報（水路通報の一種で、管区が周辺船舶に注意を促す情報）と「海の安全情報」（メール等で配信される緊急連絡）は、海上作業の前後で発信と解除を行う。解除は通常、現場と本部が相互に確認して判断するが、工程が複数に分かれる場合は、完了の定義や合図の取り決めが肝心になる。
一方で、周知の時間枠は広めに取り、実際の作業は数時間に収まることが多い。周知の網は広く長く、作業の実体は短く細い。この構造の中で、解除のトリガーを工程完了の確認に厳密に結び、現場からの最終コールを受けてから切り替える手順が、誤認を防ぐ鍵となる。
過去の誤射と今回の違い
宮古島海上保安部では2022年7月、港内での取り扱い訓練中に機関砲8発を陸側へ誤射する事案があった。当時は弾が装填されていないと誤認し「空撃ち」を指示したことが判明し、関係者が懲戒処分となった。装備の扱いと報告体制の基本に揺らぎが表れた出来事だった。
今回の問題は、装置の誤操作ではなく情報の解除手順に起因する。動作試験の終了と全工程の完了を取り違えた点に、工程設計と情報伝達の境目の曖昧さがにじむ。性質は異なるが、どちらも人の判断を支える仕組みの脆さが露呈したという点で通底している。
装備運用では、チェックリストの粒度やダブルチェックの責任線、現場から本部への完了合図の統一が事故防止の柱になる。解除の時刻を時計でなく工程の完遂で決める設計、電子ログによる合意の記録など、小さな改善の積み上げが現場の安心につながるはずだ。
掲示と現場の呼吸がそろうとき、静かな備えは確かな輪郭を取り戻す。
