上場直後に新世代チップ　中国Moore Threads、米NVIDIA依存低減を狙う

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2025.12.22

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中国GPU新興の摩爾線程智能科技（Moore Threads）は12月20日、米NVIDIA製ハードウエアへの依存を減らす狙いで新世代のAI向け半導体を発表した。12月5日に上海の科創板へ上場した直後の動きで、IPO調達額は約80億元と本土市場で2025年2番目の規模だった。代替チップの「性能」だけでなく、開発者が安心して使える供給と環境が整うかが焦点になる。

開発現場が困るのは性能差より「使い続けられない」不安だ

米国の輸出規制で中国向けの高性能AI半導体は入手が不安定になりやすく、研究機関や企業は調達計画そのものを組みにくい。摩爾線程が示したのは、AIの学習と推論の両方に向けた製品群だ。GPUは、ひとことで言うと大量の計算を並列にさばく半導体で、AI開発では「計算の土台」になる。CEOの張建中氏は、国内の開発者が海外の先端製品を待たずに済む状態を目指す考えを示した。

ただし、置き換えで最初に壁になるのはハードのスペック表ではない。NVIDIAのCUDAに代表されるソフトウエア基盤や周辺ツールが長年積み上がっており、既存のコード資産をどれだけ滑らかに移せるかがコストを左右する。Reutersは、同業のMetaX（沐曦集成電路）の上場熱も含め、中国で「自前のAI計算基盤」を急ぐ機運が強いと伝えた。競争はチップ単体から、開発環境を含めた総力戦に移っている。

IPOの追い風は「時間」を稼げるか、過熱を招くか

摩爾線程は12月5日の上場で約80億元を調達し、初日の株価は公開価格から425%高で引けた。大きな資金調達は、次世代品の研究開発や人材確保、ソフトウエア整備に「先行投資できる期間」を与える。一方で、Cinco DíasやLivemintも、同社がまだ赤字である点や、期待先行の評価になりやすい点を報じている。投資家が見ているのは足元の収益より、供給網と規制の狭間で国産勢が伸びる余地だ。

さらに厄介なのは製造面だ。米商務省産業安全保障局（BIS）のエンティティ・リストは、特定企業との取引に許可が必要になる枠組みで、制裁がサプライチェーンに波及し得る。Financial Timesは、摩爾線程が米国の制裁対象になった後に生産面で制約を受けた経緯を伝えた。中国のAI半導体が「NVIDIA不在の空白」を埋めるには、性能競争だけでなく、作れる量と作り続ける体制、そして開発者が移行をためらわない実装支援までを同時に積み上げられるかが問われる。

開発現場が困るのは性能差より「使い続けられない」不安だ

IPOの追い風は「時間」を稼げるか、過熱を招くか

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