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イーロン・マスク氏が「虚偽だ」と短く書き込んだのは2025年11月13日、報道の直後だった。CNBCは同氏のAI新興xAIがシリーズE（スタートアップの後期資金調達段階）で150億ドルを得て評価額が2000億ドルに達したと伝えたが、氏はこれを否定した。9月19日の100億ドル報道も退けており、急拡大するAI開発の資金調達をめぐって情報の食い違いが表に出たかたちだ。使途はGPU（画像処理半導体）中心と伝えられ、計画の真偽と資本の行き先が注目されている。
「虚偽」の一言が走った日
同日、CNBCはxAIが新たな大型資金を確保したと報じ、既存ラウンドへの上積みで規模が広がったとした。これに対しマスク氏はX上で「虚偽」とだけ述べ、詳細な説明には踏み込まなかった。xAIは取材に対し定型文のような自動返信で応じ、本人もコメント要請に応じなかったという。
報道側が示したのは、前回報道で示された枠に今回額が加わるという構図だ。数字の積み上げは、競合に並ぶための計算資源を一気に確保する動きと読み取れる。だが当事者の否定が重なる以上、現時点で確定的な着地点は見通しにくい。
使途として挙げられたのはGPU調達だ。LLM（大規模言語モデル）を支える計算基盤は継続的な投資を要し、調達の成否は学習計画の速度に直結する。報道はこの資金が基盤拡張に向かうと説明し、同社の計画規模を示唆した。
数字が示す背景
シリーズEとは、事業の拡大局面で資本と時間を同時に買う段階だ。評価額は将来の収益だけでなく、どれだけの計算資源を前倒しで確保できるかにも左右される。ここで語られた規模感は、研究速度を継続的に押し上げるための“持続コスト”の大きさを物語る。
GPUは並列計算に強く、学習と推論の両面で中核を担う。今回、使途として強調されたのはまさにここで、既定の30日枠を超える演算計画を支える装置群の増強だ。電力・冷却・敷地といった周辺投資も伴い、設備の拡張は単なる機器購入を超える。
同社は米南部での大規模計算設備構想を周辺に示してきた。延長後の期限に合わせた拡張や用地取得の検討が伝えられるなど、物理的な積み上げの足取りも報じられている。計算資源の内製化をどこまで進めるかは、外部依存の比率とコスト曲線を左右する。
食い違いが映すAI資本市場
非上場企業の資金調達は、条件調整や割当手続きが続く間、外部から見えにくい。途中段階の情報は断片的になりやすく、関係者の期待や牽制が混じる。今回も否定と報道が交錯し、確定情報と準備情報の境目がにわかに揺れた。
一方で市場は、計算資源の獲得競争が評価に直結する事情を織り込んでいる。競合の大型調達が相次ぐなか、同社がどのタイミングでどれだけのリソースを固定できるかは、開発速度とコストの行方に影響する。数字の大小より、継続性が重視されつつある。
現時点で確認されている範囲では、報道は資金の方向性と規模感を示し、当事者はこれを退けた。発言と数字の距離はまだ残るが、計算基盤をめぐる圧力は変わらない。静かに積み上がる設備と、言葉の応酬のあいだに、次の一手の輪郭がにじむ。
