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中国・江蘇省南京市で12月17日夕方、GPSと中国の衛星測位「北斗」を使うスマホの位置情報が大きく乱れ、車載ナビや地図アプリが実用にならない状況が広がった。南京衛星応用産業協会は信号妨害が原因だと説明している。配達や配車のような位置情報前提の仕事が止まったことで、日常の利便と引き換えに抱える都市機能の弱点も露呈した。
「現在地が信用できない」ことで起きた混乱
地図が見えていても、肝心の現在地が飛ぶ。南京では複数のナビアプリで、道路データが表示されなかったり、位置がずれて表示されたりする現象が相次いだ。外食の配達員は目的地へ近づけず、配車サービスは迎車地点が定まらない。移動そのものだけでなく、到着時刻の見積もりや料金計算といった裏側の処理まで、位置情報に支えられていることが表に出た。
さらに厄介なのは、利用者側が「通信が悪いのか」「アプリが落ちたのか」を切り分けにくい点だ。仕事の遅れが出ても、原因が自分の操作ミスなのか外部要因なのか判断できない。生活者にとっては待ち合わせや帰宅経路の不安が増え、事業者にとっては配達遅延や誤配、運行管理の乱れがそのまま損失になり得る。便利さが高密度に積み上がるほど、止まった時の痛みも大きい。
原因は衛星の故障ではなく「地上の電波干渉」
南京衛星応用産業協会は12月19日に分析を公表し、携帯通信の障害ではなく、GNSSと呼ばれる衛星測位の電波が一時的に妨害、抑圧された可能性が高いと説明した。標的は北斗とGPSの民生向け周波数帯だという。地図データを端末に保存する「オフライン地図」は、位置を決める電波そのものが受けられなければ効かない。つまり、地図はあっても自分がどこにいるかが分からない状態になる。
干渉の発生源や意図は公表されておらず、同協会は大規模行事の警備などで一時的な信号管理が行われる場合があるとも触れている。別の報道では、北斗側の専門家が、衛星システム自体は安定しており地域的な周波数干渉だとの見方を示した。都市側の課題は、位置情報が乱れた時の「代替手段」をどこまで用意できるかだ。基地局やWi-Fi、慣性センサーなど複数手段を組み合わせる設計や、配達、配車の緊急運用ルールづくりが、利便の保険として問われている。
