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イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が米国行きの機上につく直前、テルアビブ近郊の空港に報道陣のざわめきが広がった。首相は「国連総会では、イスラエル市民と兵士、そして国の真実を語る」と強調し、パレスチナ国家を承認へ動く各国の指導者を名指しは避けつつ痛烈に批判した。国連総会での演説は26日(日本時間)に予定され、米ホワイトハウスでの会談も視野に入る。発言は、戦時の外交と世論のせめぎ合いが頂点へ向かう合図のように響いた。
ベングリオンのタラップで示した強硬姿勢
25日朝(日本時間)に出発前の一言があった。ネタニヤフ氏は、テロや性暴力、子どもへの残虐行為を「非難すべき者」と断じ、「そうした者たちにイスラエルの中心部で国家を与えようとする指導者を批判する。これは決して起こらない」と語った。短い一節だが、戦時下の自国防衛と周辺国・欧米の動きへの苛烈な拒絶を詰め込んだ表現である。ガザでは人質の帰還とハマスの打倒がいまだ国家目標として掲げられ、国際社会には早期停戦と二国家解決の声が広がる。首相はそこで「真実を語る」と言い切り、物語の主語を自国の市民と兵士に据えた。戦場の最前線から遠い外交舞台に立つ前に、国内の聴衆へ示すべき芯を先に出した格好だ。
同時に、欧米の一部が相次ぎパレスチナ国家の承認や支持を打ち出した流れに対し、イスラエル政府は「いかなる義務も生まない」との立場を再確認している。首相周辺は「パレスチナ国家は成立しない」と明言し、承認の動きが和平を遠ざけると反発する。外交圧力が強まるほど、イスラエル側の発信は短く、断定的になっていく。戦時の内政、連立の力学、そして人質交渉を抱える現実が、その言葉の硬さを支えているように見える。
国連総会へ、そしてホワイトハウスへ
舞台はニューヨークに移る。80回目の国連総会では、多国間の会合が詰め込まれ、二国家解決を巡るメッセージが続く見通しだ。ネタニヤフ氏の演説は26日に予定され、注目は二点に絞られる。第一に、ガザでの戦闘と人道支援、人質問題をどう位置づけるか。第二に、二国家解決や占領地の扱いに対して、どこまで国際世論に抗して自国の立場を押し出すかである。演壇での言葉は、作戦の手綱を握る内閣や治安当局、そして揺れる同盟国の思惑に直結する。国連のホールにいる各国代表団の表情よりも、むしろ自国のテレビの前にいる有権者の反応を首相は意識しているはずだ。
演説の合間を縫い、米政権との協議も動く。首相は今回の渡米でトランプ大統領との会談を重ねる構えだ。議題は人質の解放、ハマス打倒、そして「平和の輪」の拡大とされる。米側は地域安定化の新たな構想を打ち出しつつあり、イスラエルによる一方的な動きの抑制と、停戦や復興に向けた枠組み作りを並行して探る。首相が空港で言及した「勝利がもたらした機会」は、軍事的圧力の持続と外交的余地の確保という二律背反の綱渡りを意味する。国内の強硬派、国際世論、人質家族の声。そのすべてがホワイトハウスの会談室で交差する。
承認の波と「決して起こらない」の距離
欧州を中心に、パレスチナ国家の承認や支持は政治の一大テーマになっている。焦点は、承認が和平交渉を促す梃子となるのか、それとも当事者の譲歩を固く閉ざす口実になるのかという点だ。イスラエル政府は後者だと主張し、テロの抑止と人質の解放が先決だと繰り返す。首相は今回、「これは決して起こらない」と言い切った。だが、国連総会では二国家解決の支持が重ねて表明される見込みで、会場の空気は別の現実を映す可能性が高い。言葉の強度は国内政治の安定剤になる一方、国外では交渉余地の縮小と受け取られかねない。承認の波が押し寄せるたび、エルサレムとニューヨークの距離は少しずつ開いていく。
それでも、外交はゼロかイチかでは動かない。人道支援の具体策、人質解放の道筋、越境攻撃の抑止、レバノン情勢の火消し。細い枝筋のような協議の束が、やがて大きな幹に育つかどうかは、首脳の一言よりも現場の積み上げにかかる。国連での演説は、世界に向けた宣言であると同時に、相手に渡す交渉カードの裏表を吟味する時間でもある。ベングリオンで響いた強い言葉の先に、どれだけの余白を残せるか。ニューヨークの照明が落ちたあと、その余白が問われる。