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玄関のチャイムを押した訪問看護の職員が、異変に気づいたのは2025年11月21日午前9時40分ごろだった。宮崎県延岡市古城町の住宅の中で、この家に暮らす87歳の男性と81歳の妻、日向市から来ていた51歳の長男の3人が、いずれも動かない状態で見つかり、その後病院で死亡が確認された。
階段と寝室で見つかった3人、警察がみる状況
妻は1階と2階をつなぐ階段付近で倒れていた一方、夫と長男は同じ寝室の布団の中で見つかったという。3人の首にはいずれも紐のようなもので強く絞められた痕があり、捜査関係者によれば、現時点で3人以外の人物が関わった形跡は確認されていないとされる。静かな住宅街の一角で起きた出来事は、近所の人たちにも大きな衝撃を与えている。
宮崎県警は3人全員が心肺停止で搬送され、その後死亡が確認されたことから、殺人事件として慎重に捜査しながら、家族による無理心中の可能性も視野に入れて経緯を調べている。現場の住宅からは遺書のような文書が見つかり、無職の夫婦と日向市に住む無職の長男が、なぜ同じ家で命を落とすことになったのかを探っている。
介護を抱え込んでいた妻と、高齢世帯の孤立
近所の人や捜査関係者によると、この家では妻が病気を抱える夫と、障害のある長男の世話を一手に担っていたとみられる。日常的に在宅で介護を続けていた家庭だったという証言もあり、警察は家族の生活ぶりや支援の有無など、介護を取り巻く状況についても聞き取りを進めている。家の中で起きた出来事をたどるうえで、こうした背景は欠かせない情報になっている。
報道で使われる無理心中という言葉は、家族など複数人が命を絶った場面で、一部の人が他の意思に反して巻き込まれた可能性がある場合に用いられることが多い。高齢者の介護や病気、経済的な不安を背景にした家族内の事件が各地で報じられるなか、今回のケースも、介護の重さと家族の関係性の中で何が起きたのかが焦点となっている。警察は、遺書とみられる文書の内容やこれまでの相談歴の有無を含め、慎重に裏付けを進めている。
在宅で家族を支える人は、日々の介護と家事をこなしながら、不安や疲れを1人で抱え込んでしまうことも少なくない。介護を巡る家族内の事件が報じられるたび、地域や行政がどの段階で手を差し伸べられたのかが振り返られる。静かな住宅街に立つこの家は、高齢世帯の孤立をどう防ぐかという課題を、改めて浮かび上がらせている。
