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次世代炉の実証に向け、鍵となる環境審査が前進した。ビル・ゲイツ氏が共同創設者のテラパワーがワイオミング州で進めるナトリウム冷却高速炉「ケマーラー1号機」について、米原子力規制委員会が最終環境影響評価書を公表し、重大な環境上の悪影響は見当たらないとの評価が示された。建設許可取得へ向けた連邦手続きの山場を一つ越えた格好である。
環境審査が示した結論と位置づけ
乾いた風が吹く高原の町で、巨大クレーンの影がゆっくり伸びる。環境審査の最終報告書は、同計画の立地や工事、運転、廃止措置に伴う環境影響を幅広く比較し、代替案も含めて検討したうえで結論を示した。現時点で確認されている範囲では、環境・経済・技術などの利点と費用を秤にかけ、提案どおりの建設許可発給が適切とする勧告が盛り込まれたと映る。
最終版は2025年10月に公開され、プロジェクトを主導するテラパワーは2025年10月22日に「商用の先進原子力発電所として、NRCが環境影響評価書を発行した初の事例になった」と発表した。強い断定は避けるが、先進炉の実装に向けた制度面の到達点を画した出来事であり、次の審査段階へ視界が開けたといえる。事実関係としては、NRCの最終報告書が公表され、建設許可の可否は安全審査の結論を待つ構図だとみられる。
ナトリウム×蓄熱が描く新しい電源像
計画の中心にあるのは、出力345メガワットのナトリウム冷却高速炉と、溶融塩を用いた蓄熱システムの組み合わせである。平常時は安定したベース電源として稼働し、需要の山に合わせて蓄えた熱を放出することで最大500メガワット規模まで一時的に引き上げる設計が採用されている。再生可能エネルギーの変動を受け止めつつ、系統に俊敏に寄り添う姿が浮かぶ。
同社によれば、この設計は米エネルギー省の先進炉実証プログラムの枠組みで進み、非核部分の工事は2024年6月に着工している。従来炉とは異なる技術であるがゆえに、規制当局との対話や技術文書の精緻化が重要なプロセスとなる。環境面の評価が整ったことで、設備仕様や運転条件の実装に向けた議論が現場と審査の双方で具体化していく段階に移ったと映る。
次の焦点は安全性評価と地域の電源転換
次の関門は安全性評価である。テラパワーは最終的な安全評価の完了見込みを2025年12月31日としており、建設許可の判断はその結論に基づく流れになる。建設許可申請自体は2024年3月に提出されており、環境・安全の二本立て審査を順に詰める工程が続く。規制の節目を確実に刻めるかが、初号機のスケジュールを左右する鍵になる。
計画地は、電力会社パシフィコープのサービスエリアで、退役予定の石炭火力の置き換えを念頭に置く位置づけである。地域社会にとっては雇用や税収、送電網の安定といった実利が関心事となり、全国的には炭素フリー電源の多様化という政策課題に直結する。環境審査の合格点は、その議論に現実味を与える通行手形のような意味を帯びるが、最終的な安全審査と建設・試運転の丁寧な積み上げが不可欠だといえる。
