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サイレンが島の道を何度も往復し、住民が戸口に集まった。フランス西部のオレロン島で5日、走行中の車が歩行者や自転車に相次いで突っ込み、重軽傷者が出た。運転していた男は警察に取り押さえられ、当局は動機の特定と事件の性質を慎重に見極めている。
島内で連鎖した35分間
複数の通報がほぼ連続して入ったのは5日午前だ。島の中心部にあたるサン＝ピエール＝デ＝オレロンとドリュス＝デ＝オレロンのあいだで、1台の車が歩行者や自転車に接触しながら走行を続けた。警察と救急が各地点に展開し、男は最終的に現場で制圧された。現場一帯は一時交通が止まり、捜査員が破片やブレーキ痕を丁寧に拾い集めた。
ローラン・ヌネズ内相は、車が約35分のあいだに少なくとも5人をはねたと説明した。一方で、通行人10人が負傷したとの報もある。重傷者は少なくとも2人、別の発表では3人とされ、把握はなお更新されている。いずれも島内の複数地点で起きたため、当局は時系列と移動経路の再構築を急いでいる。
被害者の一部はヘリコプターで本土の都市ポワティエへ搬送された。島の医療機関には心理支援の体制も置かれ、聞き取りが続く。負傷者の中に子どもはいないと地元当局は述べ、夕方にかけて住民の避難誘導は解除された。通りには割れたミラーの破片や衣服の切れ端が残り、いつも通りの静けさが戻るまでには少し時間がかかった。
容疑者像と捜査の焦点
取り押さえられたのはフランス国籍の30代の白人男性で、家族とともに島で暮らしていたとされる。地元では窃盗や酒気帯び運転などの前歴がある一方、治安当局の監視対象ではなかったという。自宅や交友関係の照合に加え、島外での足取りも含めて、生活圏の丁寧な洗い出しが進む。
地元検察は、男が数人をはねた後に車を降り、車両に火をつけようとした疑いがあると明らかにした。逮捕時に「アラー・アクバル」と叫んだとの説明もあり、車内からはガスボンベが見つかったと報じられている。容疑は殺人未遂を軸に捜査が進み、動機は現時点では特定されていない。島の要所には追加の警戒が置かれ、住民への聞き取りが続く。
ヌネズ内相は現場で記者団に、テロ事件として扱うかの判断には容疑者の通話記録などの精査が必要だと述べた。国家対テロ検察は事案を注視しており、収集されるデータの分析と証言の整合性が鍵になる。夕刻、封鎖が段階的に解かれると、島の幹線には再び自転車の列が戻った。だが路肩の擦過痕はまだ新しく、住民の視線はしばらくその跡を追っていた。
