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ガラスの縁に焦げの跡が残り、静かな鉱物ギャラリーに金属のにおいが漂ったという。先月、パリの国立自然史博物館で金塊など約6キロが消えた事件で、捜査当局は2025年10月21日、中国出身の若い女を組織的窃盗容疑で逮捕・勾留したと明らかにした。直後のルーブル美術館強奪とも重なり、フランスの文化財をめぐる警備の脆さが浮かんでいる。
金塊盗難で浮上した若い容疑者、捜査の焦点
事件は2025年9月16日未明、国立自然史博物館の鉱物学ギャラリーで起きた。監視映像では単独の侵入者が1時ごろに入り、4時ごろに出たとされる。展示ケースはバーナーで開かれ、館内の二つの扉は切断工具で破られていたと捜査側は説明している。周到な準備が感じられる手口である。
持ち去られたのは、ボリビア、ロシアのウラル、カリフォルニア、ギアナ、豪州に由来する金塊や金を多く含む標本で、総量は約6キロとされる。被害額は少なくとも150万ユーロに達するが、学術的・歴史的価値は数字を超える重みがあると映る。由来の記録が消えれば、公共コレクションの記憶にも傷が残る。
当局は9月30日にスペイン・バルセロナで女を拘束し、10月13日にフランスへ移送して起訴、身柄を収容したと発表した。年齢は24歳と伝える報道がある一方、25歳とする報道もあり、表記に揺れがある。逮捕時、溶融した金約1キロの処分を図ったとされ、残る行方と流通経路の特定が焦点になっている。
ルーブルの「7分」と交差する不安
2025年10月19日朝には、ルーブル美術館で王侯の宝飾品コレクションが標的になった。覆面の4人が作業員風の装いでクレーン車を使い、窓を破って展示室へ。ショーケースを破壊して9点を奪い去るまでに要したのは、およそ7分だったと伝えられる。来館者にけがはなかったが、館は終日休館に踏み切った。
盗まれた品の一部である皇后ウジェニーの冠は損傷した状態で現場付近に残され、鑑定が進められている。検察は経済的損害だけで8,800万ユーロに及ぶと示しており、被害の大きさが際立つ。歴史的価値はさらに大きく、宝石の分解や金の溶解が進めば、原状回復は極めて難しいとみられる。
両事件とも、窓や扉、ケースの切断や破壊が手口の核にある点は共通する。現時点で確認されている範囲では関連性は断定できないが、当局は背後の流通網や役割分担の有無を含め、照合を続けているとみられる。周辺では監視映像と通信履歴の分析が進み、移動経路の特定がカギを握る。
文化財をどう守るか、現場の目線から
ルーブルでは、警備員らが来館者の安全誘導を優先して対応した。現場の判断は妥当と映る一方、展示室に到達されてから奪取までを7分で許した現実は重い。自然史博物館でも扉やケースに切断痕が残り、侵入から持ち去りまでの時間をどう稼ぐかが最後の防波堤だったことが浮かぶ。
必要なのは、窓・扉・ケースの三層で「時間を稼ぐ」設計への更新である。破壊検知の即時通報、外窓の二重化、耐切断仕様のケース、搬出動線の遮断など、泥棒が嫌う遅延策を重ねたい。あわせて、高精細な台帳化や標本の識別技術を整えれば、改変や溶解後でも追跡の糸口が増えるはずだ。
文化財は単なる資産ではない。採集や寄贈、研究に連なる記憶そのものだ。相次ぐ事件を受け、予算や人員、開館中の警備運用を再設計する局面にある。誰がなぜ、どこへ運ぶのか。捜査は続く。社会の関心を途切れさせず、教訓の共有と回復の道筋を急ぎたい。