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ビル&メリンダ・ゲイツ財団は4日、今年5歳の誕生日を迎える前に命を落とす子どもが世界で約20万人増える可能性が高いとする報告書を公表した。2024年の推計約460万人から、2025年は約480万人へと増加に転じる見通しだ。国際援助の削減が主因とされ、今世紀初めて「防げたはずの死」が再び増えかねない局面にあることを示している。静かに進む支援縮小のつけを、最も小さな命が払わされようとしている。
削られた支援の先で増える「防げたはずの死」
報告書によれば、世界の5歳未満児死亡数は2000年以降、およそ半分まで減ってきたが、2025年はおよそ20万人分の逆戻りが起きると見込まれている。感染症による肺炎や下痢、はしかなど、安価なワクチンや簡単な治療で防げるケースが多いだけに、この増加は「予防可能な死」の後退として受け止められている。
背景には、国際社会から途上国の保健医療への資金が急速に細っている事情がある。ゲイツ財団の試算では、2025年の世界の保健分野向け開発援助は前年よりおよそ27%落ち込む。削減は、予防接種のキャンペーンや妊産婦・乳幼児健診など、日常的なサービスから真っ先に影響しやすく、医療へのアクセスがもともと限られている地域ほど打撃が大きい。
今回の数字は、ワシントン大学の保健指標評価研究所によるモデル分析に基づく。統計的な不確実性はあるものの、複数のシナリオを比較しても「減少が止まり、悪化に向かう」傾向は共通しているとされる。1年だけの一時的な揺り戻しなのか、それとも長期的な流れの変化なのかを見極めるためにも、援助のあり方を検証する必要がある。
ドナー国の事情と、問われる優先順位
ロイター通信などによると、援助削減はまず米国で始まり、その動きは英国やドイツなど他の主要ドナーにも広がった。各国とも財政赤字や物価高、安全保障など国内課題への対応に追われ、海外への保健支援は「削りやすい費目」として後回しにされがちだ。日本も含め、多くの国が似たジレンマを抱える。
ゲイツ財団は、こうした縮小が一時的なものにとどまらなければ、今後約20年で追加の5歳未満児死亡が1,200万〜1,600万人に達する可能性があると見積もる。これは単なる2025年のニュースではなく、2040年代半ばまで続く「選択の結果」としての数字だと位置づけられている。限られた公的資金をどこに配分するかという優先順位の問題が、子どもの生死に直結している。
その一方で、同財団は、ワクチンの普及や地域の診療所を支える一次医療への投資など、少ない資金で多くの命を救える「費用対効果の高い介入策」を示し、支援の中身を絞り込むことで悪化を食い止められると訴える。財政制約が厳しくなる中でも、援助総額だけでなく、その使い道をどう設計するかが問われている。国際情勢の変化の陰で、最も小さな命のリスクをどの社会がどこまで引き受けるのかという問いが、改めて突きつけられている。
参考・出典
- 2025 Goalkeepers Report | Bill & Melinda Gates Foundation
- With Child Deaths Projected to Rise for the First Time This Century, Gates Foundation Urges Global Leaders to Target Scarce Resources Where They Save the Most Lives
- Child deaths will rise this year as aid cuts reverse progress, says Gates
- 200,000 children under the age of 5 to die this year because of foreign aid cuts
- Urgent Action Needed As Child Deaths Projected To Rise Globally: Gates Foundation Report
