台風18号豪雨で花蓮県の堰止湖決壊、光復市街に濁流が押し寄せる

2025年9月23日午後、台風18号の豪雨で台湾東部・花蓮県の山間にできていたせき止め湖が決壊し、光復の市街地に濁流が押し寄せた。救助が続き、被災地の暮らしが一変している中、地域はこれからどう立て直されるのか？

濁流が押し寄せた「午後」の現場

現場は、山と田園が折り重なる花蓮県の光復郷。林務機関の監視データによれば、せき止め湖は2025年9月23日午後2時50分（JST）に壩頂で溢流を始め、土砂混じりの水が一気に下流へと流れ出した。水の勢いは極めて強く、堤防や橋を押し流しながら街を覆っていった。時間とともに暗く泥色に変わる濁流の様子は、避難する住民の焦りと混乱を強く印象づけた。

目に見える光景は言葉を失わせる。橋が崩落し、商店街の通りが濁流で埋まり、自動車が流された跡が残る。住民は屋根や車に登って身を守るしかなく、監視カメラや通行人の撮影した映像には、支柱にしがみつく人の姿が映っていたという。こうした場面は、濁流のスピードと土砂の混入がもたらす破壊力を伝える。

消防や自治体はボートやヘリなどを総動員して救助に当たり、他県からも特別救助隊が駆けつけたという。地域の道路網や鉄路の一部が機能を失い、孤立した住民の避難と救援物資の搬入が難航する場面も見られた。現場では「まず人命の確保」が最優先とされ、瓦礫や濁泥の撤去は二次的な課題として扱われている。

被害の全体像と行方不明の数をめぐる混乱

花蓮県当局は現場で亡くなった人の存在を確認している。地元消防の発表では死者が確認され、傷ついた家族や周囲の人々に深い衝撃が走っている。被害の広がりとともに、まずは行方不明者の捜索が急がれている。

一方で、行方不明者の数は報道によって差が出ている。国際通信は30人が行方不明と伝える報道を出しており、対して地元メディアや消防の一部発表はより少ない数字を示している。情報は刻々と更新されており、現時点では人数の確定には至っていないことを念頭に置く必要がある。

負傷者も多数にのぼり、周辺の県を含めて負傷者の報告が寄せられている。負傷の程度は軽重さまざまだが、道路や橋の損壊が救急搬送の妨げとなり、医療現場の対応力が問われる場面が続いている。救助・医療の優先順位をどう組むかが当面の課題だ。

濁流の中で支柱にしがみついている女性が一時的に取り残される様子が撮影され、のちに救出されたという報道もある。こうした映像は驚きと同時に、一人ひとりの判断が生死を分ける現場の厳しさを伝えている。救出劇の裏にある日常の崩れを想像すると、被災者の精神的負担の大きさが浮かび上がる。

台風の脅威と今後の復旧への道筋

今回の台風は国際名では Ragasa と報じられている。強い外縁の雨雲が東部を襲い、短時間で非常に多量の雨をもたらしたことが、山間部で堰塞湖が形成・決壊した要因だと指摘されている。広範な避難指示や鉄道の運休が出されるなど、台風の影響は広域に及んでいる。

堰塞湖の蓄水量は各報告で桁違いの大きさが伝えられており、ある監視データでは約9,100万トンとされる試算もある。これは一度に流れ出すと莫大な水量となり、その圧力が橋や堤防を短時間で破壊することを理解させる数字だ。こうした量を前に、防災対策のあり方を改めて問う声が強まるだろう。

救助は継続しているが、復旧は段階的になる。まずは孤立した住民の救出と医療支援を優先し、その後にライフラインの復旧、住居の安全確認、そして長期的な生活再建の支援が必要となる。行政と地域社会、そして支援団体が連携して「これから」を描かなければ、被災地の復興は遅れる。では、具体的にどのような支援が今、最も効くのだろうか？

現時点で状況は流動的であり、詳細は今後の公式発表で更新される見込みだ。救助関係者の動きや現地の声を追いながら、被災地域の一日も早い落ち着きと、被害にあった人々の暮らしの再建を見守りたい。