本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]
6日にルーマニア政府が、クマの出没に対する対応を見直す緊急政令を承認した。市街地で人に危害の恐れがある場合、従来の威嚇や麻酔を段階的に試す手順を省き、現場判断で射殺まで踏み込める。餌やりには1万〜3万レイの罰金も導入。増える人身被害に押され、安全と保全の線引きを動かす決定である。
何が変わるのか
従来法は「段階的対応」を前提に、威嚇→捕獲→移送を原則としていた。今回の政令で、市街地に出た個体に限りこの前提を外し、緊急委員会がその場で追い払い、移送、射殺のいずれかを選べる。委員会はオンライン開催も可能となり、現場到着の遅れで対応が空転する事態を減らす狙いだ。
構成にも手当てが入った。これまで中心だった憲兵隊の不在時に備え、地方警察が委員として代替し得るようにした。通報からの1〜2時間が勝負になる場面で、権限を持つ人員が近くにいるかどうかが結果を分けるためである。迅速化は「市街地に入った時点で危険度が跳ね上がる」という判断に基づく。
あわせて、餌やりの明確な定義と罰金が設けられた。観光地での餌付けや家庭ごみへの依存が人慣れを進めるとの指摘が強く、抑止策として1万〜3万レイの幅を持たせたという。政府は月内にもDNA解析に基づく最新の個体数推計とリスク地図を示すとしており、恒常的な枠組み作りの土台に据える考えだ。
背景にある数字
被害は積み上がっている。過去20年で26人が死亡、重傷者は274人に及ぶとの集計がある。2023年にはクマ関連の緊急通報が7500件を超え、山間の町では夜間の外出を控える生活が定着した地域もある。市街地に現れた個体は追っても戻りやすく、同じ地点での再出没が少なくないとされる。
個体数の把握も更新が進む。足跡などの従来法からDNA試料を用いた全国調査へ切り替わり、推定は約1万0419〜1万2770頭とされた。従来の約8000頭という目安を上回る水準で、欧州でも有数の密度だとされる。増加だけでなく、分布の偏りや人里への移動が生じているとの見方が背景にある。
管理手法は数年単位で揺れてきた。2024年には駆除枠が拡大され、実際の捕殺も約400頭に達したとの報道がある。それでも重大事案の抑制には力不足だという声が行政側に根強い。一方で、狩猟強化は根本策にならないとする環境団体の異論もあり、地域の合意形成は難度を増している。
揺れる合意と、日本への含意
現場が求めるのは「遅れない手続き」と「説明可能な線引き」である。移送や威嚇の限界が語られる一方、街中での射殺には心理的な抵抗が残る。今回の政令は、市街地という限定条件の下で迅速化に舵を切りつつ、定義の明確化と記録により恣意的運用を抑える構えだ。運用の検証が信頼の鍵を握る。
予防の積み上げも避けて通れない。餌やり禁止の実効性、ごみ管理、観光地での行動ルールの徹底は、短期の出動件数を左右する。とりわけ「人に慣れた個体」を生まない設計が重要で、取り締まりと教育を両輪に据える必要がある。科学的な個体数推計の公開は、その議論の共通土台になる。
日本でも出没対応の悩みは深い。制度や生息環境は異なるが、通報から意思決定までの所要時間、現場に権限を置く仕組み、餌付けやごみ対策の実効性など、比較可能な論点は多い。自治体ごとの体制点検に、この政令の設計図は一定の示唆を与えるはずだ。
山の縁に近い町では、通報の音だけが短く鳴り、静かな緊張が続いている。
