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薄暗い会議室で軍司令官らが整列し、硬い空気が張りつめていた。プーチン大統領は、少なくとも1万4000キロの飛行が可能とされる原子力推進巡航ミサイルの試験を「大きな成果だ」と称賛したと伝えられる。試験は2025年10月21日に実施されたとの報があり、同22日には米政権がロシアの大手石油企業を新たに制裁対象に加えた。停戦をめぐる駆け引きは、一段と鋭い輪郭を帯びている。
ロシアが見せた“長い飛行”の意味
映像に映るのは、ゲラシモフ参謀総長が机上の資料を指し示しながら報告する姿である。現時点で確認されている範囲では、2025年10月21日に新型巡航ミサイル「ブレベスニク」の試験が実施されたとされ、飛行は約15時間に及んだとの説明がある。ミサイル防衛網の突破を意図した設計とみられ、従来の迎撃想定を外す“長い飛行”が、抑止の地図を書き換える狙いをにじませる。
プーチン氏はこの成果を称賛したと伝えられるが、具体的な技術的検証はなお限られる。原子力推進を巡る安全性や運用コスト、試験空域の環境リスクなど、解くべき問いは積み上がったままだ。とはいえ、長距離・長時間の実証が事実であれば、戦域後方の防護や警戒態勢は見直しを迫られる。迎撃網の隙を突くロシアの“遠心力”と、同盟側の防空・持続戦闘の底力。その綱引きが次章の舞台を用意していると映る。
米政権の制裁強化と「トマホーク」再浮上
2025年10月22日、米財務省はロシアのエネルギー収入を削ぐとして、ロスネフチとルクオイルの複数の主要子会社を制裁対象に指定した。声明はロシアに即時停戦への同意を求める文言を織り込み、金融・供給網の圧迫で戦費調達を鈍らせる狙いを明確にした格好だ。制裁の射程は資金調達と精製・産出の現場にまで及ぶとみられ、ロシア側の輸出の柔軟性を削る効果が焦点となる。
一方で、米政権内ではウクライナが要請する長距離巡航ミサイル「トマホーク」の供与を再び議論する動きが報じられている。2025年10月5日、プーチン氏は供与が実現すれば米露関係の「破壊」につながると強く警告した。トマホークは戦域後方の補給・司令ノードを狙えるため、戦局の摩擦係数を急速に高める可能性がある。供与の可否、使用条件、在庫や運用要員の問題が重なり、政策判断は難所を迎えているとみられる。
ブダペスト案の霧と、外交と軍事の綱引き
停戦の糸口として、ハンガリーの首都ブダペストでの米露首脳会談案が浮上したとの情報もあったが、現時点で確認されている範囲では実現性は失われ、わずかな期間で霧散したと伝えられる。8月の米露首脳会談後に残った外交的な余熱は薄れ、対話と圧力の両輪は、むしろ互いを加速させる渦となっている。ロシアは長射程兵器の示威で距離と時間を押し広げ、米欧は制裁と支援装備の組み合わせで侵攻コストを積み増す構図だ。
「ブレベスニク」の長時間飛行という語りと、「トマホーク」供与の是非という現実的な選択肢。この二つの物語は、前線から数百キロ離れた後方にある発電所や燃料拠点、指揮通信網の脆弱性を同時に照らす。誰が、どこまで、何を守れるのか。停戦の座標を探る作業は続くが、手元の駒は日に日に重くなっている。決断が遅れるほど、次の一手のリスクは増すばかりだと映る。
