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割られた窓の破片を踏まないよう住人が足元を確かめ、青い回転灯が角を曲がった。5日夕方から6日朝にかけ、北本市、鴻巣市、熊谷市の住宅街で連続窃盗が発生した。いずれも2階建ての一軒家で、1階の窓や勝手口が工具で壊され、少なくとも現金約210万円と指輪などが盗まれた。半径約10km内で計15軒に被害が集中し、警察は手口の一致から同一犯の可能性を視野に捜査している。
静かな住宅街で続いた破壊音
複数の通報が重なったのは夕方以降だ。住人が在宅の時間帯も含み、玄関先に飛び散るガラス片や、こじ開けられた勝手口の痕が各地で確認された。現場はいずれも住宅街の路地に面した2階建ての一軒家で、侵入口は1階部分に集中している。侵入後の室内は短時間で物色されたとみられ、財布や小型の貴金属が狙われたケースが目立つ。
警察によると、被害は北本市、鴻巣市、熊谷市の市境をまたぐ半径約10kmの円内に点在し、移動の連続性が読み取れる配置だという。通報や現場確認の時系列を重ねると、犯行は日没後から未明にかけて間隔をあけつつ繰り返されており、街灯が届きにくい敷地側面や裏手が選ばれた可能性がある。住人の負傷情報は入っておらず、接触を避ける動きがうかがえる。
これまでに判明した被害は、現金の合計が約210万円、指輪などの装身具が複数点。被害届は順次受理が進んでおり、金額は今後変動する余地がある。いずれの家でも窓の施錠自体は行われていたが、クレセント錠付近を狙ってガラスを破り、サムターンや鍵に直接触れられる状態にしていたとみられる。短い滞在で次々に移動した痕跡が、街の静けさをかすかに乱した。
手口の共通点と捜査の焦点
各現場に残る痕跡には共通点が多い。1階の窓や勝手口のガラスに工具で加えられた一点集中の力、こじ開けの方向、割り口の高さなどが似通っている。侵入から物色に移るまでの動線も似ており、居室を広く荒らすより、現金や小物の保管場所に直線的に向かった様子が浮かぶ。短時間で離脱し、次の家へ移った構図は連続性を帯びる。
警察は同一犯の可能性を視野に、工具痕の一致や足跡、周辺のドライブレコーダー映像の解析を進める。移動半径が約10km内に収まった点から、土地勘のある人物か、下見を重ねた集団の関与も含めて慎重にみている。犯行時刻帯の交通量や、幹線から住宅街へ入る導線、そこから再び幹線へ戻る経路までを立体的に洗い出す作業が続く。
県内では今年、窓ガラスを割って侵入する手口の連続被害が各地で報告されてきた。就寝時間帯を狙う忍び込みや、日中の不在を狙う空き巣が交錯し、注意喚起が繰り返されている。今回も窓周りの脆弱性を突く点が共通し、防犯性の高い錠や防犯フィルムの有無が被害の分かれ目になった可能性がある。既定の警戒枠を超える連続性が確認されれば、態勢は一段引き締まる。
不安が走る街と備えの実践
戸口の確認を1度で済ませず、寝る前にもう1度試す人が増えたという声がある。自治体の掲示板や防災無線でも戸締まりの徹底が改めて案内され、通学路や駅周辺では警らの車両を見かける回数が増えた。臨時の自治会パトロールや、外灯の交換、空き家の見回りなど身近な対策が動き出し、夜の表情はわずかに緊張を帯びた。
防犯の基本は、侵入に時間をかけさせることだ。1階の窓に補助錠や防犯フィルムを追加し、サムターンカバーを装着する。勝手口は複数ロックを併用し、裏手にはセンサーライトや防犯砂利を敷く。貴重品は目につく場所に置かず、外出時だけでなく在宅時も施錠を徹底する。異音や不審者を認めたら、無理に対峙せず110番通報が望ましい。
青い灯が巡回を終え、街は再び静けさを取り戻す。壊れた窓の修理痕は当面残るが、鍵を確かめる手つきは習慣として根づくだろう。犯行の足取りがどこで途切れ、どこへ抜けたのか。解析が進むにつれ、地図の上の点は線となり、線はやがて結び目を見せるはずだ。現場は、静かにその時を待っている。
