ソールズベリー毒物事件はGRU主導　英調査委がプーチン承認を認定し制裁強化へ

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2025.12.05

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2018年に英ソールズベリーで起きた神経剤ノビチョクによる襲撃事件を巡り、英国の調査委員会は12月4日、ロシア軍情報機関GRUが作戦を実行し、プーチン大統領がこれを承認していたと結論付けた。同日、英政府はGRU全体と関係者11人への新たな制裁を発表し、継続的な敵対的活動への抗議として駐英ロシア大使も外務省に呼び出した。スターマー首相は「残忍なプーチン政権に立ち向かう」と述べ、英国内の安全と対露戦略を改めて問う局面になっている。静かな住宅街に残る香水瓶の記憶は、今も一部の市民に身近な脅威を想起させる。

毒物事件が映した、市民にとっての「戦場の近さ」

ノビチョク事件の発端は、2018年3月にソールズベリーで元二重スパイのセルゲイ・スクリパリ氏と娘が倒れて見つかったことだった。軍事用に開発された神経剤が市街地で使われ、救助に当たった警察官も重体となった。化学兵器禁止機関は後に英国の分析を追認し、ノビチョク系の毒物が用いられたと確認している。数カ月後には、捨てられた香水瓶から同じ物質に触れたドーン・スタージェス氏が死亡し、無関係な市民が突然命を落とした事実に衝撃を受けた人も少なくない。

今回の調査委最終報告は、GRUが作戦を担い、プーチン大統領が毒殺計画を承認していたと認定したうえで、スタージェス氏の死について同氏が道義的責任を負うと指摘した。国家レベルの作戦が、一般住宅や路上を巻き込む危険をもたらしたと公式に位置付けた形だ。2006年のリトビネンコ氏毒殺事件に続き、英国で2度目となる「プーチン関与」を示す結論でもあり、ロシアとの対立が一過性ではなく、長期にわたる安全保障上の課題だと受け止める向きもある。禁止兵器が日常空間に持ち込まれた事例として、国際的な化学兵器体制にとっても重い前例となった。

GRU制裁と大使召喚、圧力強化と市民保護の両にらみ

英政府は報告公表と同じ4日に、GRU全体を制裁対象とし、サイバー要員を含む11人の個人制裁も発表した。スクリパリ氏らへの攻撃だけでなく、欧州やウクライナでの敵対的活動に関与したとされる人物を名指しし、諜報網全体への圧力を強める狙いだ。外務省はロシア大使を呼び出し、英国に対する一連の工作に説明を求めた。ロシアのウクライナ侵攻以降、英国はエネルギー・金融・貿易など幅広い対露制裁を積み上げており、今回の措置はその中で情報機関を正面から標的にした一手と位置付けられる。

スターマー首相は、ノビチョク事件の教訓はロシアの脅威に対して警戒を緩めてはならないことだと強調し、「プーチン政権に立ち向かう」と語った。政府は制裁を通じてロシアの行動コストを高める一方、サイバー攻撃や潜入工作への備え、化学物質が使われた際の医療・警察の対応力向上など、国内の危機管理も問われている。ロシア側は関与を否定し制裁を違法だと非難しており、報復措置を取る可能性も指摘される。圧力を強めるほど緊張も高まる中で、市民への情報提供やリスク評価をどう公開し、日常生活を守るかが、これからの英政府の課題となる。

毒物事件が映した、市民にとっての「戦場の近さ」

GRU制裁と大使召喚、圧力強化と市民保護の両にらみ

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