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住宅街に隣り合う小さな公園に朝の冷気が張りつき、黄色いテープが風に揺れた。2025年10月23日朝、札幌市西区の西野すみれ公園でヒグマ2頭が確認され、市は緊急銃猟の実施判断に踏み切ったが、発砲前に市民が現場に近づき手順が中断。クマは山側へ退いた。安全確保と住民行動の関係が改めて浮かんだ出来事である。
通行止めと避難、あと一歩で止まった現場
23日8:20すぎ、区役所職員が住宅街と山林の境にある西野すみれ公園(西区西野8条9丁目)で2頭のヒグマを確認した。前日にも同公園で出没があったとされ、警察や市の関係部局が連絡を取り合い、交通整理と屋内退避の呼びかけが始まった。通学時間帯と重なる時間帯で、現場の空気は張りつめていたと映る。
9:15ごろ、市は「市民への緊急の危険があり、銃猟以外に危険を排除できない」と判断。9:40から正午まで周辺の通行禁止と避難誘導を行う、と公示した。警察の巡回や住民周知が素早く回り、要所に人員が配置された。特に現場に近い家々には戸別に「外へ出ないで」と伝えられ、準備は最終確認の段階へと進んだ。
ところが9:30すぎ、現場近くに市民が1人現れたことで手順は中断した。妨害の意図はなかったとみられるが、避難完了と射線の安全確保という前提が崩れ、緊急銃猟のプロセスはストップしたという。同じ頃、居座っていた2頭は山林方向へ姿を消した。関係機関は巡視を続けたが、駆除や発砲には至らなかったとみられる。
「最後の手段」の条件と、人が近づくというリスク
緊急銃猟は、市街地に出没したクマから人命を守るための「最後の手段」と位置づけられる。実施には、通行制限や避難誘導、射線の設定、現場周辺の人員配置など、多層の安全確保が前提となる。現時点で確認されている範囲では、札幌市もこれらの措置を積み重ね、段階的に条件を整えつつあったといえる。
一方で、発砲可能な条件は極めて厳格で、人が規制エリアに入れば成立しない。今回の中断は、その原則が貫かれた結果と映る。現場で働く警察やハンターの視界に人影が差せば、弾道の向こうにリスクが生まれるからだ。距離を取ること自体が支援であり、「見に行かない」という行動が最も確実な協力になる。
前日に続く出没で、2頭は朝の時間帯、公園の縁に長くとどまった。避難と規制の網を細かく重ねる一方、人の安全が完全に確認できなければ「次の手順」へは進めない。最終的にクマは山側へ戻り、人的被害は確認されなかった。制度の厳しさと、現場の判断の積み上げがにじむ経過である。
何が足りなかったのか、次に備える
今回、通報から公示、通行制限の準備までの流れは迅速だった。だが最終確認の直前に人が現場周辺へ近づいたことで、前提が崩れた。立入禁止の表示や声かけは行われていたが、開始予定の9:40前という時間帯の空白、告知の届き方、誘導の網の目の粗さなど、運用上の課題が浮かぶ。
次に備えるなら、エリア一帯への一斉通知や戸別周知の強化、巡回と立哨の配置見直し、学校や保育施設との緊密な連携が要る。現場に人が入らないよう、メディアやSNSでのリアルタイム情報の扱いも含め、住民が「近づかない」判断を取りやすくする設計が求められるとみられる。
住民側の備えとしては、屋内退避の徹底、窓や玄関の施錠、子どもの見守りやゴミ管理の徹底が基本になる。とりわけ「現場を見に行かない」ことが安全確保の核心だ。制度は整いつつあるが、最後に試されるのは現場の距離感である。日常の延長線上で、互いに守り合う作法を共有できるかが問われている。
