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中国発のオンライン小売「SHEIN(シーイン)」をめぐり、欧州委員会が26日、デジタルサービス法(DSA)に基づき追加情報の提出を正式に求めた。フランスで児童を模した性的人形や禁止武器といった違法商品が見つかり、同社のシステムがEUの消費者に「システミックリスク」をもたらす恐れがあると判断したためだ。パリ中心部の百貨店BHVに開いた常設店には、にぎわう店内とは裏腹に、オンラインの安全性に対する厳しい視線が向けられている。
違法商品が突きつけた「マーケットプレイスの穴」
発端となったのは、フランスの消費者団体がSHEINのオンライン・マーケットプレイスで、児童を模した性的人形や国内で禁止されている武器を発見したと公表したことだ。通常の衣料品や生活雑貨と同じ画面上に、違法性の高い商品が混在していた構図は、利用者にとって「何が安全で、何が危険なのか」が一目では判断しにくいという、プラットフォーム特有の弱点を浮かび上がらせた。ブランドの名を冠したサイトに入っただけでは、出品者の素性までは見えない。
その影響はデジタル空間にとどまらない。パリの老舗百貨店BHV内にオープンしたSHEINの常設店は、違法商品問題によってイメージ悪化のリスクにさらされている。BHVを傘下に持つSGMのメルラン会長は議会公聴会で、問題視されているマーケットプレイス部分とは距離を置く姿勢を示し、児童を模した性的な人形の販売は到底受け入れられないと強調した。そのうえで、百貨店内で扱うSHEIN商品のすべてを自社側で審査していると説明し、実店舗の信頼を守ろうとする立場を打ち出した。
一方、SHEINは今月5日、フランス向けサイトから外部出品者によるマーケットプレイス商品を削除し、自社が販売する衣料品のオンライン販売だけを続けている。パパン中小企業担当相はテレビ番組で「オンラインの無法地帯を終わらせなければならない」と述べ、マーケットプレイスを再開するなら、戻す商品が消費者保護基準を満たすことを示す証拠が要ると指摘した。利便性の高い販売網を維持したい事業者と、安全を重視する規制側の要求のあいだで、どこまで審査と監視を引き受けるのかが問われている。
DSAの圧力と仏政府の攻防、広がる「オンライン規制」の波
欧州委が今回の一歩を踏み出した背景には、SHEINのシステム全体がEUの消費者に与える影響への懸念がある。DSAは巨大なオンラインプラットフォームに対し、違法コンテンツや危険な商品の拡散を防ぐ体制整備を義務づける枠組みだ。欧州委は、フランスでの違法商品販売の事例や各国からの報告を踏まえ、SHEINがこうした義務を十分に果たしているか、追加情報の提出を通じて検証しようとしている。SHEIN側は広報を通じ、要請に迅速に応じているとするが、システミックリスクという重い言葉は、単発の不祥事にとどまらない構造的な問題意識を示す。
より強硬なのはフランス政府だ。政府はすでにDSAに基づく正式な調査開始を欧州委に求めているほか、国内でのSHEINサイトを3か月停止する措置を裁判所に申請している。パリの裁判所は26日に予定していた審理を12月5日に延期したが、司法判断の行方しだいで、プラットフォーム運営の在り方が大きく揺らぐ可能性がある。欧州委は現時点で正式調査には踏み切っておらず、各国政府の圧力とEU全体としてのバランスをどう取るかが、今後の焦点になりそうだ。
こうした動きはSHEINだけに向けられているわけではない。パパン担当相は、AliExpressやJoomでも児童を模した性的人形が販売されていたとして、これらも法的手続きの対象となり得ると述べた。EU内では、特定企業を狙い撃ちにするのではなく、同種のサービスを提供する事業者を同じ土俵で規制する方向性が強まっている。SHEINの弁護士は弁論の準備は整っているとし、企業としてはルールの枠内で事業継続を目指す構えだが、オンライン市場全体が「安さとスピード」から「安全と説明責任」へどこまで軸足を移せるかが、静かに問われている。
