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夕暮れの祈りに集まった声が、いまは瓦礫の隙間から助けを求める呼び声に変わっている。インドネシア・東ジャワ州シドアルジョのイスラム寄宿学校「アル・コジニー」で9月29日、建物が崩壊した。数十人が閉じ込められたとみられ、救助は時間との闘いが続く。安全管理と許可の在り方が問われている。
現場で続く救助と「声」
現場では、隊員が手工具で瓦礫を少しずつ取り除き、狭い空間を匍匐で進む救出が続いている。重機は待機しつつも二次崩落を避けて極力使わない方針だ。崩壊から72時間は「ゴールデンタイム」とされ、名を呼び、反応を確かめながらの捜索が続いている。家族は校門脇で夜を明かした。
崩壊は9月29日 17:00ごろに起きた。直後から地元の防災機関や救助隊が集結し、同日 23:09には「捜索と搬送を継続」との発表が出た。崩れたのは祈りの場がある下層部まで及び、わずかな振動でも影響し得る不安定な状態だという。現場判断の重みが増していると映る。
一部報道によれば、周辺海域の地震により夜間の作業が一時中断された。瓦礫の隙間に空気と空間を確保するため、トンネルを掘り進める手法が取られているが、土砂の小規模な滑りが起きる恐れもある。救助か安全か、その綱引きが続いているとみられる。
数字でみる被害と揺れる発表
被害の全体像は流動的だ。9月30日 13:00時点の公的集計では、負傷者は約100人、そのうち26人が入院、70人は帰宅し、死亡は3人、重症者の転院が1人と記録された。現場の混乱が続く中で、数字は刻々と改訂されている。把握の遅れが救助の判断にも影響し得る。
その後、海外通信社は死者5人と伝え、行方不明者が多数に上るとの報も出た。救出は段階的に進み、掘削したトンネルを通じて複数の生徒が救われたとされる。一方で、病院搬送後に亡くなるケースも報告され、数字の振れ幅が現場の厳しさを物語っている。
当局は、閉じ込められている人数について「混乱」があると認め、まずは救助に集中すると強調している。家族の名を読み上げ、かすかな返答に耳を澄ます時間が続く。救える命を取り逃がさないために、無理な資機材投入を避ける判断も続いているとみられる。
何が崩れさせたのか、許可と構造の問題
原因の中核にあるのは、増築と荷重の管理である。公的機関は、当日朝から上階のコンクリート打設が行われ、祈りの時間帯に基礎柱が重量に耐えられず、上層から下層まで連鎖的に崩落したと説明した。現場の住所や時刻も特定され、技術的失敗の色が濃い。
許可の問題も浮かぶ。自治体トップは、無許可の建築を見過ごさない考えを示し、同様の工事には厳しく臨む姿勢を明言した。一部報道では、当該増築が必要な許可を得ていなかったとの指摘がある。もし事実なら、制度と監督のほころびが人命を奪ったことになる。
宗教教育の場である寄宿学校は全国に多数あり、老朽化や拡張の需要が絶えない。宗教省は現地を視察し、支援と再発防止策を示した。誰のための工事だったのか。偶然の悲劇か、必然の結果か。現場の静けさに交じる祈りの声は、安全への約束を迫っている。
