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電気自動車の組立ラインが並ぶ広大な工場が、近くまったく別の役割を担おうとしている。米オハイオ州ローズタウンの元EV工場について、ソフトバンクグループが最大30億ドルを投じてAIデータセンター向け機器の製造拠点に改修する計画を進めていることが、2025年11月20日に明らかになった。生成AI「ChatGPT」を動かす膨大な計算能力の裏側で、日本企業がどのように存在感を高めようとしているのかが見えてきた。
ソフトバンク、米EV工場をAIインフラ拠点に転換へ
この工場はかつて自動車メーカーの生産拠点として使われ、その後EV企業に引き継がれた経緯を持つ。ソフトバンクグループは2025年8月に約3億7500万ドルで敷地を取得し、さらに最大30億ドルを上乗せして建屋や設備を全面的に作り替える構想だ。改修後は、サーバーや冷却装置などを収めたモジュール型データセンター設備を組み立て、テキサス州ミラム郡などで建設が進む新拠点に順次送り出す計画とされる。
報道では、生産開始は早ければ2026年1〜3月期と見込まれている。敷地内には実証用の小規模データセンターも置き、最新設計を試しながら量産に反映させる案も伝えられる。運営には、同じ工場をかつて保有していた台湾の鴻海精密工業（Foxconn）も合弁会社を通じて関与する方向とされ、地域の雇用や関連産業への波及効果が期待されている。生成AIブームで急増するサーバー需要を、地方の旧EV工場が吸収する形だ。
巨大計画「スターゲート」が狙うAI時代の土台
今回の投資は、オープンAI、オラクル、ソフトバンクの3社が進める巨大インフラ計画「スターゲート」の一部でもある。スターゲートは2025年1月にホワイトハウスで発表されたAIインフラの合弁事業で、最終的に最大5000億ドルを投じ、合計10ギガワット規模の計算能力を米国に整備する構想だ。9月にはテキサス州やニューメキシコ州、オハイオ州ローズタウンなど5カ所で新たなデータセンターを建設する計画が公表され、向こう数年で4000億ドル超の投資と2万5000人規模の雇用創出が見込まれている。
ソフトバンクはこの枠組みの中で、約180億〜190億ドルを投じるとされる。通信や投資で培ってきた資金力を、今回はサーバー工場や電源インフラといった「土木型」の事業に振り向けつつある格好だ。ローズタウンの静かな町に並ぶ巨大な工場群も、数年後にはAI専用チップを載せたサーバーラックと冷却塔の光で満たされるだろう。その変化は、デジタルの進化を支えるハードウェアの現場が、見えないところで大きく塗り替わりつつあることを物語っている。
