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横断歩道に並んだ人たちの前を、白いセダンが赤信号の交差点へ突っ込んでいった。2025年11月24日昼ごろ、東京都足立区梅島の国道4号で、販売店から盗まれたとされるトヨタ「クラウン」が歩道に乗り上げ、11人が死傷した事故だ。車は歩道上を時速60キロ近くで走っていたとみられ、現場には今も花束が絶えない。
歩道を高速度で直進 わずか約300メートルの暴走
捜査関係者によると、車は足立区役所近くの交差点で赤信号のまま横断歩道に進入し、そのまま歩道に乗り上げた。植え込み脇の狭いスペースを時速60キロ近い速度でおよそ100メートル走りながら歩行者を次々とはね、再び車道へ戻った後もトラックなど計6台と衝突を繰り返し、最終的に停車した地点は最初の横断歩道から約290メートル先だったとされる。
この暴走で、男性1名が死亡し、フィリピン国籍の会社員女性も横断歩道上ではねられて意識不明の重体となり、25日に死亡が確認された。ほかに10〜70代の男女9人が重軽傷を負い、昼休みの時間帯に利用者が多い区役所周辺は、一瞬で救急車とサイレンに覆われる現場となった。
「試乗だった」と否認 責任能力と危険運転罪が焦点に
事故を起こしたとみられるのは、足立区在住で職業不詳の37歳の男だ。警視庁によると、男は24日午前10時20分ごろ、現場から約1キロ離れた自動車販売店に入店し、店員とほとんど言葉を交わさないまま、駐車場にあった中古クラウンに乗り込んで走り去った疑いがある。過去にも同じ店で購入を巡るトラブルを起こしていたとされ、運転免許は所持していたという。氏名については、警察が「責任能力の判断」から公表していない。
男は窃盗容疑で逮捕されたが、「クラウンに乗りたかっただけで盗んだつもりはなく、試乗だと思っていた。神奈川県の山へ行くつもりだった」と供述し、事故後は車を放置して歩いて自宅に戻ったと説明している。警視庁は道路交通法違反（ひき逃げ）と自動車運転処罰法違反（危険運転致死傷）も視野に、重大な速度超過や信号無視など極めて危険な運転で人を死傷させた場合に適用されるこの罪と、当時の精神状態の両面から刑事責任能力の有無を慎重に見極めようとしている。
