鼓動、ロンドンで大相撲復活し満席の会場に伝統の余韻広がる

鼓動、ロンドンで大相撲復活し満席の会場に伝統の余韻広がる

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34年ぶりに大相撲がロンドンへ戻った。10月15日、前回と同じロイヤル・アルバート・ホールで公演が幕を開け、横綱・大の里と豊昇龍の土俵入りに「よいしょ」のかけ声が重なった。催しは19日までの5日間。チケットは週内ほぼ完売と報じられ、初日は満席の熱気が会場を包んだ。日本の伝統文化が英国の音楽殿堂と交わる、象徴的な場面である。

赤いホールに響く「よいしょ」、満席が揺れた夜

幕が開くと、厳かな入場儀礼に続き、呼び出しの木拍子が鳴る。英語で解説するアナウンサーが初心者に所作を手ほどきし、観客は一手一手に息をのむ。序盤は静寂、仕切り直しの間合いが続き、ぶつかった瞬間に空気が裂ける。ロンドンの夜に、相撲の律動が確かに鳴ったと映る。儀式と勝負の切り替わりに、客席のざわめきが波のように往復した。

土俵上では、軽量の翠富士が体格で勝る金峰山に真っ向から挑み、最後は持ち上げられて土俵外へ運ばれると、客席から感嘆が漏れた。中盤にはウクライナ出身力士が巧みな足技で熱海富士を崩し、場内がどよめく。結びは豊昇龍と大の里がそろって白星を収め、弓取り式で初日を締めくくった。歓声と拍手が重なり、殿堂は柔らかな余韻に沈んだ。

この舞台のために、本格的な土俵が会場内に据えられた。英国で調達した土を固め、ワラ俵を叩いて円を結い、神職が清めの儀を施す。屋根を模した吊り屋形が照明の下で浮かび、赤い円形の客席がぐるりと取り巻く。スポーツであり神事でもある相撲の質感が、ロンドンの殿堂に溶け合ったといえる。視線は四角い土俵へ、耳は木拍子へ、心は所作へと引き寄せられた。

34年ぶりの帰還が映す文化外交

ロイヤル・アルバート・ホールでの大相撲は1991年以来となる。八角理事長は開幕のあいさつで、日本の大切な文化をロンドンで披露できる誇りを語り、相撲の魅力を伝える機会と位置づけた。主催の日本相撲協会も、5日間にわたり取組と儀式を通じて伝統と精神性を体感できる催しだと強調している。文化とスポーツの交差点に立つ公演と映る。

公演は19日まで。取組は連日、夜の部を中心に進み、最終日は昼の部となる編成だ。会場の公式販売は春に始まり、先行販売を経て一般販売へと移った。大相撲の往時を知るロンドンのファンに加え、初めて生の取組を見る層も少なくないとみられ、会場は連日、熱を帯びている。伝統の所作が、観客の手拍子を呼び覚ましている。

一部報道では週内の公演は完売とされ、初日は満席の観客が土俵入りのたびに声を合わせた。具体的な入場者数の公表は現時点で確認されていないが、満員に近い熱気は写真と映像からも伝わる。相撲がロンドンの夜を占領する光景に、34年の時を超えた手応えが浮かぶ。文化外交の確かな足取りが感じられる。

土俵は続く、ロンドンの5日間

協会がロンドンに持ち込んだのは勝負だけではない。所作の意味や決まり手の妙を英語で伝える仕掛けを重ね、新たな観客に門戸を開いた。一部報道によれば、力士数はかつての約1000人から600人規模へ減ったとされ、裾野拡大は喫緊の課題だ。欧州からの新たな入門者に期待がかかる。ロンドンでの成功は、次の一歩を後押しするとみられる。

残りの四日間も、横綱を頂点とする取組が続く。勝敗は一番ごとに完結するが、所作と儀礼は五日間をゆるやかにつなぐ。相撲の強さとやわらかさ、その両方を見せる場として、ロンドン公演は記憶に残るはずだ。土俵の縁から、遠く日本の文化圏が静かに広がっていく。ロンドンの喝采は、国技の明日へ届く。

参考・出典

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