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店頭の案内板に「購入は会員登録や特定カードが必要」と小さく張り紙が増えた。任天堂は2025年11月4日に2026年3月期第2四半期の連結決算を公表し、ニンテンドースイッチ2は発売から約4か月で1000万台超に達し、今期の販売計画も上方修正した。では、条件なしに買える“普通の販売”はいつ戻るのか。数字と現場の声を手がかりに、3つのシナリオで見通しを探る。
いまの数字と売り場の肌感
スイッチ2は2025年6月5日に発売され、勢いは夏から秋へと続いた。9月末時点の累計は1000万台超で、11月4日の決算にあわせて今期のハード販売計画は従来の想定から引き上げられた。増枠は年末商戦に向けた増産と世界的な需要の強さを前提にしたものだ。発売直後の4日間で350万台超を売り切った初速も、供給網が一定の手応えを得ていることを示す材料になっている。
一方で売り場の実感は違う表情を見せる。家電量販店では転売対策として、会員アプリの連携や特定のクレジットカードの所持などを購入条件とする店舗がなお少なくない。入荷は小刻みで、抽選や入荷告知の抑制を続ける店もある。数字が伸びるほど、年末までの“駆け込み需要”が強まりやすいのが悩ましいところだ。供給が増える兆しと、現場の慎重運用が同時に走っている。
年内は厳しく、年明けが焦点
最も期待したいのは年内の平常化だが、現実にはハードルが高い。年末商戦は年間で最も需要が膨らむ局面で、ギフト需要と再販売目的の動きが重なりやすい。増産の効果は出始めるとしても、波の大きさが勝れば“条件付き販売”は維持される可能性が高い。各国で人気タイトルの発売が続くことも、年内の在庫に余裕を生みにくい要因になる。
視線は自然と年明けへ移る。1月以降は需要が一段落しやすく、修正後の計画に沿った生産が実現すれば、店頭在庫の回復が見込みやすい。とはいえ、対策を急に緩めれば在庫が局所的に吸い上げられる懸念も残る。まずは購入条件の緩和から段階的に広がり、その後に“条件なし”が常態化する流れが現実的だろう。新学期の商機が近づく前までに、どこまで安定供給の形を整えられるかが鍵になる。
来年度に持ち越す場合のリスクと備え
避けたいのは来年度への持ち越しだ。半導体や物流の乱れが長引けば、増産の計画を達成しても地域ごとの在庫偏在が残りやすい。過去には他社の高価格帯機で、世界累計が大きく伸びても各地の店頭では抽選や条件販売が続いた例がある。人気作の投入時期、オンラインでの新機能拡張、そして為替や部材コストの動き次第では、供給優先で価格維持を図る判断が続く可能性もある。
それでも、兆しはある。修正後の計画が示すのは「作っても売れる」という確信であり、供給網にとっては投資判断を後押しするサインだ。販売現場のルールも、在庫の積み増しが確認できれば順次やわらぐだろう。年明けにかけて列の長さが短くなり、店頭の張り紙が静かに外されていく。そんな小さな変化が、平常に戻る合図になるはずだ。
