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シドニーで開かれた国際宇宙会議の一室に、人影が凝縮する。地球低軌道の“危険な50個”が改めて俎上に載り、ケスラーシンドロームをどう回避するかが問われたのである。レーダー観測と統計解析で知られる専門家らが示した最新の見立てでは、日本のH-IIロケット由来のデブリが第3位に挙がったと伝えられている。宇宙の混雑をどう減らすか、現実味のある道筋が焦点となった。
シドニーの会場で高まる危機感
会期中の熱気は、日程が進むほど増していった。2025年9月29日 14:30、レオラブスのダレン・マクナイト氏が登壇し、宇宙安全・持続可能性・安全保障を横断する「スペース・トライアド」の枠組みを語った。短期の衝突回避から長期の環境維持、そして透明性の向上まで、三つ巴の課題を一体で捉える視点が提示されたと映る。
同氏は長年、低軌道の大型デブリを統計的に洗い出す研究で知られる。現地では、危険度上位50の最新版についても議論が交わされ、日本からはH-IIロケットの上段などが第3位に位置づけられたとの報が走った。ランキングの細部は今後の正式公開を待つが、対象候補の顔ぶれは想像以上に変わっていないとの見方が広がっている。
会場からは「どの順番で片づけるのか」「誰が費用を負担するのか」という問いが相次いだ。日本にとっては、自国由来の機体が上位に入った重みがある。偶然の残骸なのか、設計・運用の時代背景の帰結なのか。回収の優先順位が各国の政策判断とどう折り合うのかが、次の論点として浮かぶ。
なぜ「50個」なのか、半減という目安
発端は2021年の査読論文にさかのぼる。マクナイト氏らは、衝突確率や断片化の潜在影響を統計的に評価し、低軌道で「最も懸念される放置物体」50個を特定した。衛星本体よりも、巨大で頑丈なロケット上段など大型の金属体が衝突時の破砕リスクを高めるという指摘が、当時から明確に打ち出されている。
同氏の推計では、この50個を計画的に除去できれば、低軌道でのデブリ生成リスクはおおむね半減する。さらに上位10個に絞った早期回収だけでも、全体のリスクを3割前後下げられると示唆した。限られた予算のもとで最大の効果を得る「優先除去」の考え方が、各国の政策や商業ミッション設計に波及しているとみられる。
一方で、顔ぶれの地域偏在は根強い。旧ソ連・ロシアの上段「SL-16」や「SL-8」、軍事衛星「コスモス」シリーズなど、冷戦期〜90年代の大型機体が危険度の多くを占める構図は、現時点で確認されている範囲では大きく崩れていない。最新リストでも傾向は続いたとする報道があり、歴史の負債が長期のリスクを左右している現実が浮かぶ。
増え続ける機体、規制と現実のずれ
足元では新たな懸念も芽生えている。2024年初頭以降、低軌道に放置されたロケットは26基に達し、うち21基が中国製だと報じられた。米欧は打ち上げ事業者に対し、上段や衛星を軌道から確実に離脱させる規制を敷くが、中国では同水準のルールが浸透していないとの指摘が出ている。規制の差が宇宙環境に直結する図式である。
中国は「国網」や「千帆」と呼ばれる巨大通信ネットワークの整備を進め、打ち上げ頻度は高止まりしている。マクナイト氏は、こうした展開が数年続けば軌道上に放置された上段が100基を超える恐れがあると警鐘を鳴らした。放置が続けば、運用衛星の衝突回避マヌーバや保険料負担が累積し、民間事業の持続性を蝕む構図が広がっている。
では、何から着手するべきか。上位10〜50の優先除去に、国際的な役割分担と費用負担の仕組みをかみ合わせるのが現実的だろう。誰に有利なのかという疑念を薄めるためには、回収対象の選定基準と進捗の透明化が要る。日本発のデブリ回収技術やドラッグセイル実証をどう束ね、他国の規制整備と歩調を合わせるかが次の勝負所になるとみられる。