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高市早苗首相が国会での初答弁を重ねるさなか、時事通信の世論調査が輪郭を示した。2025年11月7〜10日に個別面接方式で2000人に聞いた結果、内閣支持率は63.8%に達し、発足時としては2001年の小泉内閣に次ぐ歴代2位。不支持は10.8%、態度未定は25.4%とされ、初の女性首相という期待と就任直後の首脳外交が評価材料になった構図が浮かぶ。
数字が示す出発点
支持理由で最も多かったのは「リーダーシップがある」29.2%だった。続く「首相を信頼する」23.5%、「印象が良い」22.2%はいずれも人物像への評価で、政策項目よりも「任せられるか」という感覚が先行した格好だ。一方で支持しない理由の上位が「期待が持てない」4.3%などにとどまる点は、反対の論点がまだ定まっていない現状を物語る。
同調査は個別面接方式（調査員が対象者に対面で質問する手法）で、有効回収率は59.1%だった。電話やネット調査に比べ、対面は設問の意図が伝わりやすい半面、社会的望ましさが回答に影響する場合がある。結果の高さを額面だけで測らず、手法の特性も踏まえて受け止める必要があるだろう。
過去との対比では、21年の岸田内閣の40.3%、24年の石破内閣の28.0%を大きく上回った。長引いた政治不信の流れから見れば、今回の水準は「反転」のサインと読める。ただし、長期的な信任は成果の積み上げでしか定着しない。発足時の高評価が、政策実装と説明でどれだけ維持されるかが焦点になる。
支持の中身と不安の芽
人物評価が支持の核になったことは、首相の発信が届いている裏返しでもある。国会での応酬では強気の語り口が目立つが、同時に説明の丁寧さや合意形成の手順が問われる局面も増える。期待と求心力が高い時期こそ、異論の扱いに細心の注意を払うことが、のちの運営コストを下げる。
不支持の側に明確な争点が見えにくいことは、当面の政権運営には追い風だが、裏を返せば「評価の定着前」ということでもある。物価や税、社会保障など実生活に直結する政策が具体化する過程で、期待は容易に揺れうる。調査結果が示す高い出発点を、制度設計と実施で裏打ちできるかが鍵だ。
連立評価と政党地図の揺れ
自民党と日本維新の会の連立を「評価する」は38.0%で、「評価しない」22.2%を上回った。判断留保も39.8%と多く、新体制を見定める姿勢が広い。自民支持層では肯定が多く、維新支持層ではさらに強かった一方、連立を解消した公明支持層では否定的な見方が目立った。支持母体の関係性が、連立観の分岐を生んでいる。
政党支持では自民が21.8%で首位、無党派層は54.4%と半数超だった。野党側では参政党が4.0%で先行し、立憲民主党や国民民主党が僅差で追う。支持の動きは流動的で、内閣の初期評価と同様、次の政策選択や与野党の対立軸の示し方で変わり得る。固定化しない地図を前提に、各党のメッセージの質が試される。
読み解きとこれから
今回の数値は、象徴性と初動の成果が合わさった「追い風」の証左である。首脳外交の連続や人事配置は、最初の合図としては十分に機能した。次は、物価と所得、社会の安全といった生活直結の課題に、工程表と成果指標を伴う説明を重ねられるか。数字が示す信任を、実務の積み上げで確かな支持へ変えていきたい。
高支持率の静かな熱は、日常の手応えとともに定まっていく。
