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日本共産党で委員長や議長などを務め、理論面でも党内に影響力を持ってきた不破哲三氏（本名・上田建二郎）が、2025年12月30日午後1時20分、東京都内の病院で急性心不全のため死去した。95歳だった。党は喪主を長女の上田千加子氏とする家族葬を行い、党としての葬儀も別途実施する予定だ。大きいのは「看板」だけでなく、路線の説明役を誰が担うかである。
「理論の番人」を失い、現場で起きる小さな空白
不破氏は、党の意思決定の中枢である党中央委員会（党の最高指導機関）に長く関わり、委員長から議長まで党運営の要所を歩いた。国会での論戦に加え、党内では政策や歴史認識をどう言葉に落とし込むかを担ってきたとされる。訃報は、対外的な顔の交代というより、党が「なぜその立場なのか」を説明するときの拠り所を一つ失った出来事として受け止められそうだ。
実務では、政策文書や選挙公約の“根拠”をどう整理するかが当面の焦点になる。党の研究部門に当たる社会科学研究所（党の研究機関）にも関与してきた経緯があり、理論と選挙実務の接続を誰が引き継ぐのかは見えにくい。党大会や幹部会の議論は制度上回るとしても、細部の言い回しや優先順位を調整する役回りは、組織ほど硬くないところで効いていた面がある。
綱領改定で示した「柔軟さ」と、次に残る問い
不破氏は1970年に書記局長に就き、1982年に委員長へ、その後2000年に議長へと移った。党史の中では、2004年の綱領（党の基本方針）改定を主導したことが一つの節目とされる。党外からは、従来の主張を守るだけでなく、現実の制度や社会の受け止めに合わせて説明の仕方を組み替える姿勢を強めた時期として記憶されやすい。
一方で、柔軟さは分かりやすさと表裏だ。連携を広げるほど、どこまで自前の主張を押し出すかが難しくなる。2015年の安全保障関連法の成立を受けた国民連合政府（安保法制の廃止などを掲げた構想）も、その典型的な悩みを抱えていた。党葬の段取りと並行して、路線を「誰の言葉」で支えるのか、そして次の選挙で協力の幅をどこに置くのかが、党に残る具体的な問いになる。
