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タイ軍は12月8日、カンボジアとの国境沿いで空爆を開始したと発表した。最東端のウボンラチャタニ県では同日、新たな衝突でタイ兵1人が死亡、4人が負傷しており、タイ側はカンボジア軍からの攻撃への対抗措置だと説明している。国境地帯ではここ数カ月、砲撃やロケット弾の応酬が続いてきたが、航空機による攻撃が公然と行われるのは緊張の新たな段階だ。前線の兵士と国境で暮らす住民に、このエスカレーションはどんな現実を突き付けているのだろうか。
前線の兵士と国境住民に重くのしかかる「空からの戦火」
ウボンラチャタニ県の国境地帯では、かねてから小規模な銃撃戦やにらみ合いが繰り返されてきたが、タイ軍報道官は今回、カンボジア軍の攻撃を受けた後に衝突が激化し、タイ兵の死傷を伴う事態になったと明らかにした。タイ側はこれに対し、軍用機を投入して複数の軍事目標を攻撃していると説明し、地上部隊の安全確保を前面に掲げる。しかし、国境線が村落や農地と入り組むこの地域では、軍事行動の一つひとつが住民生活のすぐ脇で起きている。
7月にはロケット弾がタイ側の住宅地やガソリンスタンドを直撃し、死傷者が出たとタイの英字メディアなどが伝えた。病院への砲撃も報告され、軍同士の衝突が民間インフラを巻き込む形で広がった経緯がある。さらにタイ政府は、複数の国境県で住民の避難を進め、数万人規模が一時的な避難所に身を寄せたとされる。日本大使館もこれまで、国境付近への渡航を控えるよう注意喚起を出しており、現地では観光や越境商取引が途絶えた地域もある。
国境を挟んで行き来してきた人びとにとって、今回の「空爆開始」は、従来の小競り合いとは質の異なる不安を生んでいる。農地が前線と重なる地域では、収穫期であっても畑に出ることをためらう農家が出ているとの報道もある。タイ軍は攻撃対象をカンボジア側の軍事施設に限定していると強調するが、空からの爆撃は誤爆のリスクを高めるとの懸念が、国境両側の住民から静かに漏れ始めている。
崩れた停戦と揺れる外交、抑止と対話のはざまで
今回の空爆は、7月の5日間にわたる激しい戦闘後に結ばれた停戦合意が事実上崩れたことを示すものだ。ロイターや英紙などによれば、この停戦はトランプ米大統領とマレーシアのアンワル首相が仲介し、48人の死者と多数の避難民を出した戦闘をようやく収束させたものだった。その後も地雷爆発などで負傷者が出ており、タイ側はカンボジアによる挑発行為が続いたと主張している。今回の空爆も、そうした一連の攻撃に対する「防衛的措置」と位置づけられている。
一方で、カンボジア国防当局は、タイ軍こそが停戦を破ったと非難し、空爆を「残忍で受け入れ難い」と表現したと各紙は伝えている。元首相のフン・セン氏も影響力を保ちつつ、兵士に自制を求める一方でタイを「侵略者」と呼び、国内世論を引き締めている。両国の主張は真っ向から対立しており、国境画定をめぐる歴史的な経緯や寺院周辺の領有権争いが、今回の軍事行動の背後に影を落としている。
ASEAN議長国のマレーシアは、7月の停戦合意に続き、国境地帯への国際監視団派遣を調整してきた。最近では各国大使や駐在武官がタイとカンボジア双方の国境地域を視察し、それぞれが被害状況を訴える場となっている。域内諸国にとっても、軍事対立の長期化は投資や人の移動を冷やすリスクとなるからだ。今後は、空爆という強い抑止シグナルを発したタイと、主権侵害を主張するカンボジアのあいだで、どこまで実戦の線引きを守りつつ対話の糸口を探れるかが焦点となる。国境の村で日常を取り戻せるかどうかは、その駆け引きに静かに左右されている。
