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徳島の住宅街の上空をかすめた帰投中の陸自ヘリに、緑の光が走った。陸上自衛隊第14旅団は12日、第14飛行隊所属のUH-1Jが11日夜に約30秒間レーザー照射を受けたと明らかにした。乗員6人にけがはなく機体被害もないが、部隊は徳島県警に通報した。夜間訓練直後の発生で、旅団は「安全を脅かす行為」と受け止め、対策の検討に入った。住宅地上空で起きたという事実は、地域の安全管理にも課題を投げかける。
現場で起きたこと
発生は11日19時50分ごろ。JR阿波山川駅の北側、吉野川市の住宅地上空を飛行中のUH-1Jに、地上から緑色のレーザーが照射された。照射時間は約30秒。ヘリは夜間飛行訓練を終え、所属基地へ戻る途上だった。眩光は一瞬でも視認性を落とし、特に暗順応が求められる時間帯では安全余裕を縮める。
第14旅団は、乗員6人に負傷がないことと、機体に損傷がないことを確認したうえで徳島県警に通報した。仲西勝典旅団長は、乗員や航空機の安全を脅かす危険な行為だとして遺憾の意を示し、事案を重く見て必要な対策を講じる考えを述べた。軍民を問わず、飛行の安全を守るという姿勢を前面に出した格好だ。
照射地点は家屋が密集する一帯の上空にあたり、夜間でも生活の明かりが残る環境だ。低高度での旋回や進入が重なる場面では、操縦者は外部監視と計器監視の双方に注意を配る。そこに指向性の強い光が差し込めば、瞬間的な残像や眩惑が生じ、状況把握を乱すおそれがある。人的被害や機体損壊が無かったことは結果論にすぎない。
第14飛行隊は徳島県松茂町の拠点を基盤に、災害派遣から訓練支援まで幅広い任務を担う。住宅地と訓練空域が近接する地域では、日常の生活圏と航空運用が折り重なる。今回の通報対応は、地上・空双方の安全を一体で考える出発点になる。部隊の説明は端的だが、現場での緊張感はにじむ。
レーザー照射とは何か
レーザー照射は、地上から狭い光束を航空機に向ける行為を指す。光は距離に応じて拡散するが、点光源に近い眩しさは残像やグレア(まぶしさ)を生み、暗所での視力回復に時間を要する。夜間飛行中は操縦者の外界認識と計器監視が命綱で、短い照射でも離着陸や低高度飛行の安全域を削りうる。
緑色光は人の視感度が高く、同じ出力でも明るく知覚されやすい。コックピットのシールドやバイザーが一定の軽減効果を持っても、予期せぬ方向からの照射は回避行動を難しくする。特に複数の灯火が入り組む市街地上空では、光源の特定も容易ではない。航空活動の現場では、偶発的な反射であっても警戒の対象となる。
航空の安全を害する行為は、法令で禁じられ警察が捜査に当たる。意図の有無にかかわらず、空に向けた強い光は飛行の妨げになり得るとの認識が必要だ。屋外イベントや指向性ライトの使用では、上空への漏れを抑える配慮が求められる。今回の通報は、事実関係の確認と再発防止策を進める起点になる。
地域では、航空安全への関心が高まりつつある。9月には同旅団が徳島の山林火災の消火活動中、輸送ヘリの小部品紛失を公表した。被害の報告はなかったが、空と地上の安全は表裏だという意識が共有された出来事だった。継続する情報公開と、住民からの迅速な通報が、リスクの芽を早く摘むことにつながる。
住宅の明かりが遠のく上空を、ローター音が細くなっていく。変化の兆しは、まだ小さい。