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秋の海風が強まる日本海沿岸で、止まっていた歯車がまた動き始めた。2025年10月31日、北海道後志の泊村議会が臨時本会議を開き、北海道電力泊原発3号機の早期再稼働に同意する意見書を可決した。規制側の審査合格を受け、地元議会が再稼働へ先行して意思を示した格好であり、2027年早期の再稼働を目指す北電の工程に影響を与える局面である。
決定の経緯
泊村議会は、地元の商工団体などが提出した早期再稼働を求める陳情を踏まえ、「村の産業の活性化につながる」との期待を明記した意見書を可決した。24日に原子力関係特別委員会が陳情を全会一致で採択しており、31日の本会議で方針を正式な議会意思へと格上げした流れである。委員会と本会議の構成が重なる泊村の議会事情も、意思決定の迅速化を後押ししたと映る。
周辺自治体では、共和町と神恵内村の各特別委員会が28日に同じ陳情を採択し、議会の同意方針がほぼ固まった。岩内町は引き続き所管委員会での審査を進めており、地域全体の足並みがどこまで揃うかが次の関心事だ。再稼働に必要な地元同意の枠組みは道と立地4町村が中心で、今後の本会議採決や首長判断の時期が注目される。
安全審査と手続き
原子力規制委員会は2025年7月31日、泊原発3号機の安全対策が新規制基準に適合すると正式に認めた。長期化した審査の事実上の合格により、再稼働へ向けた手続きは工事計画の認可、使用前検査、詳細設計の確認といった実務段階へ移っている。北電は2027年早期の起動を掲げるが、制度上は技術的要件に加え、地元の理解と合意の積み上げが不可欠だ。
現時点で確認されている範囲では、道と周辺4町村との安全協定に基づく同意の取り付けが最大の焦点である。鈴木直道知事は賛否の最終判断を留保しており、道が実施する住民説明やパブリックコメントの過程で論点整理が進むとみられる。国は「新規制基準への適合が前提、地元理解の下で進める」との立場を繰り返しており、手続き面の丁寧さが問われる局面だ。
地域経済と論点
地元経済界は、再稼働が建設関連需要や雇用の下支え、電力の安定供給と価格抑制に資すると主張する。一方で、活断層評価や津波対策、避難計画の実効性など、安全と備えに関する論点は重い。道内調査では、地元同意の範囲を「道央圏などに拡大すべきだ」とする意見も一定数を占め、意思決定の正統性をどう確保するかが政治的課題として横たわる。
一部報道によれば、反対・慎重派は「審査合格＝安全の保証ではない」と指摘し、運転差し止め訴訟の帰趨や新たな科学的知見の反映を注視している。支持派は「電力需給の逼迫や脱炭素の要請に応える現実的手段」と反論する。議会の同意が出そろっても、知事判断と住民理解なくして運転再開は成り立たないという基本線は動かない。
数字でみる泊3号機
2009年営業運転開始。2012年の定期検査入り以降、長期停止。規制委の審査は11年9カ月に及び、2025年4月30日に審査書案取りまとめ、同年7月31日に正式合格。地元同意の中心は北海道と立地4町村（泊村、共和町、岩内町、神恵内村）。泊村は2025年10月31日に本会議で意見書可決。周辺2町村の特別委は28日に陳情採択。北電は2027年早期の再稼働を目標としている。
今後の見通し
村議会の同意は大きな節目だが、再稼働の最終局面は道の判断に委ねられる。道内の説明会や合意形成の工程、工事計画認可や使用前検査の進捗が予定どおり重なるかが時間軸を左右する。政治・社会的信頼を損なわないためには、最新の工事状況や耐震・津波対策、避難計画の運用訓練結果を、数字と事実で継続的に開示する姿勢が不可欠だ。
