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軍幹部向け会合でドナルド・トランプ大統領が「内からの戦争」と述べ、都市を軍の訓練場に活用すると示唆したとの情報が広がっている。日本時間2025年10月1日現在、公式記録で当該発言は確認できていない。どこまでが事実として把握でき、法制度や権限の上で何が可能なのかを、確認された材料に絞って整理する。
広がる発言情報といま分かること
会合は軍の高位者を前に開かれ、治安悪化や移民問題への強硬姿勢を重ねて示したという趣旨の情報が各所で共有されている。内容としては、民主党が統治する都市での取締りに軍がより大きな役割を担うべきだという主張や、都市空間を訓練場所として活用する提案があったとされる。ただし、具体的な指示や作戦計画の提示まで踏み込んだ記述は乏しい。
現時点で確認されている範囲では、ホワイトハウスや国防総省の公開資料に当該表現の公式な書き起こしは見当たらない。一方で、トランプ政権は発足当初から治安対策を最重要課題に掲げ、軍の規律や戦闘態勢の立て直しを繰り返し強調してきた。年初のやり取りでも、トランプ氏は軍指導部の責任を厳しく問う姿勢を示し、ピート・ヘグセス国防長官もアフガニスタン撤収の検証と説明責任に言及している。
会合が非公開であれば、記録の公開が遅れる可能性はある。だとしても、都市を恒常的な「訓練場」として扱うには多数の法的・実務的ハードルがある。現時点で公的資料から読み取れるのは、治安や軍の規律に関する強い言葉が並ぶ一方で、米国内での部隊運用に関する制度上の制約は依然として重いという事実だ。
国内で軍を動かすルール
米国では、連邦軍による国内の一般的な法執行を禁じる枠組みが長く維持されてきた。陸軍や空軍が日常的な警察権を行使することはできず、海軍や海兵隊も同様の方針が適用される。例外は限定的で、連邦法に基づく特別な権限の発動や、州からの要請に基づく支援などに限られる。したがって、連邦軍が広範囲で都市に展開し取締りを担うという像は、通常の前提から外れる。
一方、州兵は性格が異なる。州知事の指揮下にある場合、治安維持や災害対応を補完でき、連邦の現役部隊より柔軟に国内任務に当たる。ただし、州兵でも武力の行使や検問などは州法や知事命令に基づく明確な根拠が求められ、配置や期間は厳密に管理される。首都ワシントンの州兵は大統領の管理下という特殊性があるが、それでも展開には公示や命令文書が伴うのが通例だ。
都市を訓練に用いるという発想自体は、治安当局や軍が共同で行う演習の延長線上に位置づけられ得る。ただ、公共空間を使う訓練は地元当局との調整や住民告知が不可欠で、武器や車両の使用は厳しく制限される。恒常的な「訓練場」化となれば、私有財産や営業活動、交通、騒音、プライバシーなどへの影響が大きく、制度上も現実的にも高いハードルが立ちはだかる。
州兵派遣をめぐる現状と見通し
ロサンゼルスやワシントン、メンフィス、ポートランドに州兵を派遣した、あるいは派遣を命じたとの言及も共有されている。日本時間2025年10月1日 12:00時点で、本稿の確認範囲では、当該都市に関する具体的な派遣命令や展開状況を示す公式文書や首長の声明は確認できていない。通常、派遣が実施されれば命令番号や期間、任務の範囲などが公的記録として残る。
仮に派遣が行われるとしても、ロサンゼルスの場合は州知事の権限が中心となり、州法に基づく要件が前提となる。首都ワシントンでは連邦側の判断が相対的に大きく、指揮系統も異なる。いずれの場合も、現場での任務は交通整理や施設防護などに限定されるのが一般的で、恒常的な警察活動の代替として機能させる設計にはなっていない。
今回の発言情報は、強硬な治安メッセージを強調する政治的演出として消化される可能性がある。他方で、治安の悪化や薬物問題に直面する都市の不安に直接訴える面も否定できない。制度の範囲内で治安をどう立て直すかは、軍と警察、州と連邦、そして市民社会のバランスに関わる。今後、公的な記録が追加され次第、発言の真意と実務の整合性を改めて点検する必要がある。
