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爆煙が立ちのぼる小型船の映像がSNSで繰り返し流れ、議論が一段と熱を帯びている。カリブ海や中南米の太平洋沿岸で米軍が展開する麻薬撲滅作戦をめぐり、「裁判抜き」で容疑者を殺害する是非を問うと、支持は少数にとどまり、反対が多数を占めた。最新のロイター／イプソス調査が、強硬策への世論の輪郭を描いた。
数字が映した賛否の境界
調査は全米の成人1200人を対象にオンラインで実施され、誤差は±3ポイントだ。設問は、司法の関与なしに米軍が麻薬密売容疑者を殺害することへの賛否を尋ねたもの。結果は支持29%、反対51%となり、可視化されたのは治安対策と法の手続きの間にある深い溝である。
党派別では温度差が際立つ。共和党支持層では支持が58%に上り、反対は27%にとどまった。一方、民主党支持層では約4分の3が反対し、賛成は1割前後に限られた。安全の名の下に強権をどこまで許容するか、その基準は陣営ごとに揺れている。
今回の数字は単独の政策評価にとどまらない。対象は軍による致死的行使であり、通常は沿岸警備隊が拿捕し司法手続きに付す従来型とは質が異なる。超法規的殺害（司法手続きを経ない致死的行為）を正当化するかどうか、問いは米国の法意識の芯を試している。
作戦の実像と人権の懸念
作戦は数か月前に始まり、少なくとも20回の軍事攻撃が報じられている。標的は麻薬を積んだとされる船舶で、死者は79人以上に上る。国際人権団体は民間人を巻き込む超法規的殺害だと批判し、欧州の一部の同盟国からも国際法違反の懸念が示されている。
ホワイトハウスは、米国は麻薬カルテルと戦争状態にあり、武力紛争では裁判所の関与は不要と主張する。政府は作戦映像を広く発信し、抑止の効果を強調してきた。だが、武器使用の正当化根拠と事実認定の透明性は十分とは言い切れず、説明責任を求める声は国内でも強まっている。
沿岸での薬物流通対策は、長らく拿捕と訴追を軸にしてきた。軍による遠隔攻撃は、交戦の法理に依拠しつつ国内の刑事手続きから離れる。誰を戦闘員とみなすのか、どの場面で致死的手段が許されるのか。作戦が続くほどに、線引きの説明は重みを増す。
ベネズエラへの拡大論と世論の距離
調査は領域外への拡大にも触れた。違法薬物の流入を止める目的で、ベネズエラ政府の同意なしに米軍が同国で武力を行使することへの支持は35%にとどまった。近隣への介入は支持が伸びにくく、強硬策全般への賛否が必ずしも連動しない構図が見える。
同国のマドゥロ大統領を軍事力で排除する案への支持は21%で、非軍事的な方法での排除支持が31%と上回った。政権内部の離反を促す思惑は隠されておらず、8月には逮捕につながる情報提供の報奨金が5000万ドルへ倍増している。ただ、軍事行動が最善かどうかの判断は割れている。
一方で、麻薬カルテルを外国テロ組織に指定し軍事力行使を可能にする枠組みには、賛同も一定程度みられる。強硬策の受容は対象や手続きで揺れ、個別の選択肢ごとに支持の幅が変わる。世論は二択ではなく、段階の選び方を注視している。
