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発射命令が機上から送られ、炎が夜空を割った。2025年11月5日 18:35、カリフォルニア州のバンデンバーグ宇宙軍基地で、核弾頭を搭載し得るICBM「ミニットマン3」の運用試験が行われた。弾頭は模擬体で、信頼性と即応性を確かめる定例の検証だ。
実験の概要とねらい
今回の試験は「GT 254」。空軍の部隊が米海軍のE-6BからALCSを用いて指令を送り、地上では手順通りのカウントダウンが進んだ。飛翔した再突入体は約6,760kmを飛び、クェゼリン環礁の米軍試験場で計測用データを残した。
計画は長期に組まれ、武器体系の性能や精度を点検する目的に絞られる。運用試験を統括する第377試験評価群が手順を管理し、現地の第576飛行試験隊が機体構成や計測を詰めた。収集したテレメトリは今後の保守と改修に生かされる。
実弾頭は搭載せず、安全手順を重ねながら、発射から終末までの各段階で挙動を確認する。試験の積み重ねは、偶発的な不具合の芽を早期に見つける作業でもある。地味な検証だが、抑止の信頼性はこうした工程に支えられている。
事前通告と緊張感の扱い
ロシアのペスコフ大統領報道官は、米側から今回の発射実験について事前通告を受けたと述べた。発射そのものは一国の主権行為だが、通知は誤認の回避に資する。緊張が高まる局面ほど、連絡線を開いておく効果は小さくない。
米側は過去の案内で、発射に先立つ通知や関連枠組みへの通報を行う運用を示してきた。透明性の確保は、技術の確認という目的と矛盾しない。今回も、手続きの徹底が“通常の試験”であることを外に伝える緩衝材になった。
一方で、核戦力をめぐる言葉は荒れがちだ。だからこそ、個々の試験が示すのは誇張ではなく手順の積み上げであることに尽きる。通告の一報と発射台の静けさには、政治の熱と現場の冷静さという対比がにじんでいる。
近代化の歩みと連続性
ミニットマン3は長期の運用を続けてきたが、後継のLGM-35A「センチネル」への更新が進む。移行期でも既存戦力の健全性は保たねばならない。だからこそ、古い機体の改修と新型の準備という二重の仕事が並走している。
今回の任務には複数のミサイル翼や整備部隊が加わった。輸送、組立、点検、計測、解析。見えにくい役割が連鎖し、一発の発射に収束する。成功の報せは短いが、そこに至るまでの調整は長く、関わる人の手つきを残す。
作業が片づくと、レンジは元の静けさに戻る。残るのはログと数値、そして次の発射窓に向けた宿題だ。派手さのない時間の先に、抑止の重みは積み重なる。現場に立つ人々は、それを日常の手順として淡々と受け止めている。
