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駐車場で新設コンセントの通電確認が進み、技術者が計器を見上げた。ユビ電は2025年11月4日、EV充電サービスWeChargeのスマートコンセントが「ザ・ライオンズ世田谷八幡山」に導入されたと発表した。日本初のZEH-Mをうたう分譲マンションに、戸建て感覚の自宅充電が重なり、集合住宅でのEV利用を日常に近づける一歩になる。
マンションで「自宅充電」を当たり前に
ユビ電によれば、本件では駐車区画ごとにEV充電用の200Vスマートコンセントを個別に設置し、24時間いつでも充電できる運用とした。共用の充電スペースを順番待ちする負担を避け、帰宅後にそのまま車を繋ぐだけという暮らし方を想定する。過去5年間で国内のEV保有は約2.2倍に増えたとされ、日々の足としての利便に直結する基礎充電の整備が焦点になっている。
管理面の工夫も特徴だ。ユビ電が電力会社と直接契約する「別引き込み方式」を採るため、充電に関わる電気代は管理組合の会計に乗らない。共用部の料金精算や住民間の負担感をめぐる合意形成の手間を抑えつつ、各世帯が自分の利用分をアプリで確認し、決済する流れを整える狙いである。導入後の運用に迷いやすいポイントを先回りして設計に織り込んだ格好だ。
物件側は省エネ仕様を軸に据え、日本初のZEH-Mをうたう取り組みと自宅充電の両輪で、環境性能と日常の使い勝手を重ねる。駐車場の一部に基礎充電を常設すれば、近隣の急速充電まで出向く必要は減る。深夜帯に繋いで朝に満充電という生活リズムが無理なく回り始めると、移動の計画そのものが静かに変わっていく。
仕組みと料金の設計
設備はシンプルなコンセント構成を基本とし、初期費用の抑制を図る。専用機器を大規模に並べるのではなく、区画ごとのニーズに合わせて拡張できる点が要となる。マンション全体ではスマートコンセントを一括管理し、充電の時間帯を分散することで、共用電力のピークを慌てずならす考え方だ。将来の電力メニューや需要制御への対応も視野に置く。
料金は使った電力量に応じた従量課金を基本に、月間の走行距離に合わせて選べる定額プランを併設する。同社はShortからSuper Longまで4段階を用意し、日々の使い方に応じて組み合わせられると説明する。外出先の充電に頼らず、帰宅後の数時間で必要分を積み増すという都市部の暮らしに、過不足の少ない料金設計を当てはめた。
コンセントは3kW級の出力に対応し、定格200V/20Aでの安全な運用を前提とする。高出力の急速充電と違い、目の前の駐車区画で静かに充電が進むのが基礎充電の良さだ。日中は外で走り、夜は住まいで電気を足す。マンションという器のなかに、EVの「日常」を置き直す設計が滲む。
政策の追い風と現実の課題
国は2023年10月に充電インフラ整備の指針を定め、2030年の目標を30万口へと引き上げた。背景には「2035年までに乗用車の新車販売を電動車100%に」という方針がある。高速道路の高出力化を進める一方で、日常の出発点となる普通充電の厚みが鍵を握る。今回の導入は、その基礎部分を集合住宅でどう形にするかという実装例のひとつになる。
経済産業省の整理でも、集合住宅での基礎充電の整備は重点分野とされる。特に分譲では合意形成が障壁になりやすく、導入後の費用負担と運用の透明性が普及の成否を左右する。別引き込み方式や個別課金を前提にしたサービスが広がれば、管理の煩雑さを避けながら導入を後押しできる。制度と現場の工夫がかみ合う場面が増えていきそうだ。
夕刻、車を停めてケーブルを差すだけの所作が、次の朝の移動を静かに支える。小さな積み重ねが街のエネルギーの流れを変えるとき、集合住宅の駐車場は単なる通過点ではなくなる。今回の導入は、その変化を確かめるための実寸大の試みである。