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中国東部・温州市の中級人民法院が2025年9月29日、ミャンマー北部ラウカイの詐欺拠点を牛耳ったとされるミン一族ら計39人の量刑を言い渡した。うち11人に死刑が科された。越境型の詐欺産業に対し、中国が重い判断を下した節目となる。
判決が示した重さと、裁判所の認定
判決は、一族の中核とされる被告らに対して最も重い刑を連ねた。11人に死刑、さらに5人に執行猶予付きの死刑が言い渡され、組織の規模と犯行の悪質さを正面から断じた形である。いずれも一審の判断であり、今後の手続きに移る。
そのほかには無期懲役が相当数に及び、有期刑も広く科された。とくに中枢や現場の統括に位置した被告には、長期の自由刑に加え、罰金や財産没収などの付加刑が重ねられた。実入りの還流を断ち切る狙いもうかがえる。
裁判所は、一族と複数グループが詐欺や違法カジノ、麻薬密売、売春の運営に系統的に関与したと認定した。2015年以降に組織された犯罪によって資金は膨張し、詐欺と賭博で100億元以上を稼いだとされる。越境犯罪の常態化が背景にある。
ラウカイで何が起き、どう温州の法廷へ来たのか
一族は中国国境に近いラウカイで影響力を広げ、武装勢力の庇護を得て拠点を拡張していった。正規の経済を装う外観の裏側で、通信詐欺の「金主」を招き入れ、園区の運営や保護を担い、資金と人員の流れを囲い込んだ構図である。
転機は2023年10月20日だった。組織側は摘発を逃れるため、詐欺施設の人員を移動させつつ武力で制圧し、逃走を試みた者に発砲した事案が発生した。結果として中国人14人が死亡し、6人が負傷したとされる。組織の暴力性が露わになった。
その後、周辺国との連携や現地勢力の変化が進み、一族の主要メンバーが身柄を引き渡される流れが加速した。首領格の明学昌は死亡とされ、残る中核が摘発対象となった。摘発の圧力が、園区という外枠を内部から崩したとみられる。
捜査は中国側で本格化し、2024年12月30日に39人が起訴された。事件は越境犯罪の典型として位置づけられ、組織犯罪・暴力・資金洗浄・人の移動が一体化した実態が訴因に重ねられた。2025年2月中旬には温州の法廷で審理が始まっている。
広がる越境詐欺と取り締まりの現在地
取り締まりが続くなかでも、ミャンマー国境地帯の詐欺拠点は完全には消えていない。2025年3月19日には、タイ警察がミャンマー側に最大10万人が残存しているとの認識を示した。救出や送還の動きが続く一方、再編も進む現実がある。
詐欺拠点は、違法な賭博や暗号資産決済、偽装投資のスキームを組み合わせ、国境とプラットフォームを跨いで展開してきた。取り締まりが強まると拠点は分散し、カンボジアなど周辺へ重心を移す。供給源である人身取引や借金束縛の解体が要となる。
今回の判決は、資金・拠点・暴力の三つの歯車を断ち切るメッセージであると同時に、一審の段階にすぎない。上訴の可能性や共犯の追及、資産の追跡に加え、被害回復と再犯防止の制度設計が問われる。越境犯罪の抑止は持久戦となる。
