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新興SNS「Bluesky」に、ホワイトハウスの公式アカウントが流れ込んだのは2025年10月17日のことだ。左派ユーザーの比重が高いとされる場への“乗り込み”は、最初の投稿から挑発の色合いを帯びた。大統領の在任期を切り取った映像をまとめて提示し、「見逃してきた“ヒット”を並べた」と受け取れる調子で存在感を示した。政権のメッセージ発信が、より直接的で対立を恐れない局面に入った光景が浮かぶ。
挑発で始まった初投稿、その狙い
ホワイトハウスの初投稿は、在任中の出来事や演出をコラージュした動画で幕を開けた。強い支持層に向けた誇示であると同時に、反対派の反応を誘う構図でもある。現時点で確認されている範囲では、動画には野党指導部を揶揄する素材も含まれ、対立軸をわかりやすく提示したと映る。政権がソーシャル上の議題設定を主導し、批判を含む注目を拡散の燃料に変える手法が前面に出た。
投稿のタイミングは2025年10月17日で、プラットフォームの空気に正面から切り込む形になった。ここで見えるのは、従来の記者会見や声明文に加え、短い動画やフレーズで「反応」を生むことを優先する運用である。反発と共感を同時に呼び込み、可視性を高める。そうした設計は、近年の政治コミュニケーションの常套手段だが、今回は左派色の濃い場に踏み込んだ点で象徴性が強いといえる。
一方で、最初の投稿以降に「政府機関の一部閉鎖をめぐる民主党非難」や「抗議デモへの嘲笑」といった具体的な内容があったかどうかは、一次情報での裏取りがなお途上である。該当する投稿や公式説明が確認でき次第、検証が進むとみられる。現段階では、初動の映像と挑発的トーンが際立ったことだけが確かな起点である。
Blueskyを選んだ背景
Blueskyは、旧ツイッターの買収以降に「移住先」の一つとして存在感を増し、オープンな分散設計やコミュニティ運営の柔軟性で支持を集めてきた。左派・リベラルの受け皿として語られることも多く、情報の流通様式や文化的文脈が既存の大手SNSと異なる。そうした場に政権中枢が自ら足を運ぶことは、反対意見の渦中で存在を主張する戦術と重なる。賛否の反応を織り込む覚悟がにじむ。
政権のソーシャル運用は複線化している。大統領本人は独自色の強いサービスを重用しつつ、政権としては左派ユーザーが多い場にも触手を伸ばす。副大統領や閣僚級の発信もあわせ、プラットフォームごとに異なる受け手へ訴求する構図だ。今回の参入は、その網をさらに広げる試みと映る。異なる“公共圏”へ出向き、争点を持ち込むことで、反応の総量を拡大する狙いが透ける。
ただし、場の文化に馴染まぬ語り口は反発を呼びやすい。挑発の度合いが高いほど、メッセージの真意や具体政策が埋没するリスクもある。短い動画と決め台詞に回収される政治は、熱量を生む一方で、合意形成の回路を痩せさせる。反応至上主義と説明責任の均衡をどう取るのか。この問いは、どの政権にとっても避けて通れない課題として横たわる。
省庁の参入とガバナンスの試練
今回、ホワイトハウスに続いて政府機関のアカウント開設も相次いだと一部報道が伝えた。現時点で確認されている範囲では、国土安全保障省などがBlueskyの運用指針やプライバシー通知を整備し、対外広報に活用する姿勢を示している。官庁が第三者サービスを使う以上、個人情報の取り扱いや記録管理、発信の正確性に関する枠組みは不可欠である。制度の敷設は最低限の土台だ。
同時に、偽アカウントやなりすまし、ミラー配信の問題は避けがたい。Blueskyはドメイン連携による認証が利点だが、視認性の高い検証マークの整備や運用の透明性が追いつかない局面もある。政府公式の署名と第三者の複製をどう区別するか。ユーザー側のブロックやフィード選択も含め、分散型の設計は受け手の主体性に重心が置かれる。公的発信の可視性は、自動的には担保されない。
さらに、官民の境界で発信が拡散する時代、挑発を前面に出す広報は短期的な注目を呼ぶ一方で、長期の信頼残高を減らす危うさをはらむ。省庁のアカウントがどこまで論評や皮肉に踏み込むのか、どこから先は政策説明に専心するのか。線引きの共有は組織内だけでなく、市民に対しても必要である。今回の参入は、ガバナンスの再点検を促す試金石になっているといえる。
