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電話や面談が相次いでいる。米ホワイトハウスの当局者が、議会側に「この法案には賛成しないでほしい」と静かに伝えているのは、NVIDIAのAI半導体を中国などへの輸出から締め出す「GAIN AI法案」だ。世界のAIブームを支える同社のビジネスと、対中強硬路線を求める議会の声が、ワシントンで正面からぶつかり始めている。
ホワイトハウスと議会、AIチップ輸出を巡る綱引き
問題の法案は、軍事輸出規制の対象となる高度なAI半導体について、まず米国内の需要を満たすまで海外、とりわけ中国や武器禁輸国への販売を制限する内容だ。安全保障を理由に、マイクロソフトやAmazon、AIスタートアップのAnthropicなどが支持に回り、上院では国防権限法案の一部として審議が進められてきた。米企業にとっては、クラウド向けデータセンターで使う最先端チップの優先確保につながる。
一方で、ホワイトハウスの一部高官は、過度な輸出規制が米企業の世界シェアを削り、中国勢に市場を明け渡しかねないとみている。彼らは議員に対し、GAIN AI法案への反対を促しつつ、安全保障上の懸念には別の手段で対応すべきだと説明しているという。AI半導体で圧倒的なシェアを持ち、世界最大級の時価総額を誇るNVIDIAも、この法案には強く反対しており、成立の行方は見えにくくなっている。
NVIDIAの中国市場と揺れる戦略
NVIDIAは、生成AIの学習に不可欠なGPU（画像処理半導体）で事実上の標準となってきた。だが米政府は2022年以降、軍事転用の恐れがあるとして、中国向けの高性能チップに段階的な輸出規制をかけている。ジェンスン・フアンCEOは、中国ビジネスの売り上げやシェアが大きく落ち込んだと繰り返し訴え、過度な制限は米国の技術的優位を弱めると警鐘を鳴らしてきた。
それでも議会側には、中国の軍事力強化につながる高度な計算資源は極力渡すべきでないとの強い不信が根強い。今回の法案は、その不安に応える象徴的な一手といえるが、ホワイトハウスと主要半導体企業の反発で、今後は文言修正や別の規制案が模索される可能性もある。AIチップを巡る一連の駆け引きは、単なる一社のビジネスを超え、技術覇権と安全保障の折り合いをどう付けるかという、より大きな問いを映し出している。
議会廊下で交わされる一つ一つの説得や駆け引きの先に、どのような輸出ルールが形づくられるのか。AI計算力を抱えるサーバールームの静かなファンの音は、その行方をまだ知らないが、世界の投資家と開発者は固唾をのんで見守っている。
