導入負担低減が焦点、ヤマハ発動機など5社が排ガスCO2回収に挑む

ヤマハ発動機とサクラ工業は2025年12月25日、JCCL、東洋製罐グループホールディングス、三井物産プラスチックと5社で共同開発契約を結び、工場排ガスから二酸化炭素（CO2）を回収する装置の技術開発と、事業化の検討を始めたと発表した。装置を作るだけでなく、導入負担を下げる運用や収益の形までセットで考える点が特徴になる。

中小工場で「回収」を現実にするには、電力と手間が壁になる

5社が検討するのは、燃焼排ガスなど比較的高濃度のガスからCO2を取り出す仕組みだ。核になるのは、JCCLのアミン含有ゲル技術（CO2を選んで吸着する材料）に、排熱を使った省エネ運転を組み合わせる発想である。大規模プラント向けで語られがちなCO2回収を、より小さな工場の現場に近づけようとしている。

もう一つの工夫が、前処理としてNOx（窒素酸化物）やSOx（硫黄酸化物）を除去する工程を組み込む点だ。回収材や装置の性能は、排ガスの“汚れ”に左右される。たとえばボイラーや炉の排気をそのまま通すのではなく、手前でガスを整えてから回収することで、設備を小さくし、保守の頻度も抑える設計を目指す。

実証の拠点と期限を先に置き、ビジネスモデルまで詰める

開発は、ヤマハ発動機が静岡県森町に持つ水素関連の実証施設「ZERO BLUE LAB 未森」を拠点に進める計画で、2027年7月末までに大型装置の完成と、FS（フィージビリティスタディ=実現可能性調査）の完了を予定する。得られた運転データを事業設計に反映し、検証を重ねたうえでヤマハ発動機グループの拠点へ段階的に展開する方針も示した。

論点は、装置の性能だけではなく「誰が、どの費用を、どの形で回収するか」まで含めて組み立てられるかにある。回収したCO2を利用するのか、外部に引き渡すのかでも必要な設備や契約は変わる。ヤマハ発動機は2035年のスコープ1（自社の燃料燃焼など直接排出）のカーボンニュートラル達成を掲げており、今回の連携は、その目標に向けた現場実装の試金石にもなる。

参考・出典

• 異業種5社連携で「CO₂回収装置」の開発検討を開始~省エネ型CO₂回収技術により、中小企業にも導入しやすいモデルの構築を目指す~ – ニュースリリース | ヤマハ発動機株式会社
• 異業種連携で「CO₂回収装置」の開発検討を開始 ~省エネ型CO₂回収技術により、中小企業にも導入しやすいモデルの構築を目指す~ | 株式会社JCCL
• 中小向けに小型CO2回収装置を開発へ、ヤマハ発動機ら5社協業 | エネルギーとIoTの融合時代を拓くスマートグリッドフォーラム
• ヤマハ発動機など、CO2回収装置の開発検討へ異業種5社で連携 | TECH+（テックプラス）
• ヤマハ発動機など5社、CO2回収装置を共同開発…2027年7月に大型装置完成へ | レスポンス