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山梨県が、ブドウ棚に有機薄膜太陽電池を張り巡らせる実証実験に踏み出した。県オリジナル品種「サンシャインレッド」の着色を高めつつ、発電した電力で夜間にLEDを灯し、カーボンフリー農業のモデルづくりを狙う。再エネ設備は果樹農家の負担と収益をどう変えるのか、その模索が始まっている。
棚の下で変わるぶどう農家の一日
園地に入ると、頭上には透明感のあるフィルム状パネルが連なっている。これが有機薄膜太陽電池だ。薄くて軽く曲げられるため既存の棚に載せやすく、金属パネルよりも光を通すので、果房にも柔らかな日差しが届く。
棚の下で育つ「サンシャインレッド」は、山梨県が約15年かけて育成し品種登録した赤ブドウで、マスカットの香りと鮮やかな色合いが売りだ。その分、色づきが不十分だと高値で出荷できず、暑さの厳しい年ほど農家の収入リスクが大きくなる。
実証では、昼間に得た電力をバッテリーにため、夜間にLEDライトで房を照らす。透過した太陽光と夜の人工光を組み合わせることで着色向上が確認されつつあり、従来の反射資材を敷く作業を減らせるとの期待も出ている。品質と労力の両面で、棚の下の風景が変わりつつある。
県と大学が描くカーボンフリー農業の設計図
この仕組みを導入した背景には、山梨県が掲げる「やまなしカーボンフリー農業」がある。果樹栽培ではハウス暖房や選果場の設備に多くの電力を使うため、再生可能エネルギーでまかなうことは、温室効果ガス削減だけでなく電気代の安定にも直結する。
県は、公立諏訪東京理科大学の研究者と組み、有機薄膜太陽電池をブドウ棚に載せる世界初の実証に挑んでいる。棚の上で発電し、その電気を再びブドウの着色向上に使うという、小さな循環型エネルギーシステムを果樹園の中に作り出そうとしている。
県の公表資料では、今後、設備投資の負担や発電効率、パネル下での生育への影響を数年かけて検証し、他の園地にも展開できる条件を探る方針が示されている。将来は、得られた電力の一部を冷蔵庫や選果作業にも回し、園全体のエネルギー自給につなげる構想も語られている。
ソーラーシェアリングの波と、果樹産地の次の一手
農地の上に太陽光パネルを立て、作物栽培と発電を両立させる「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)」は、農林水産省の制度でも位置づけが進み、水田や野菜畑などで事例が増えている。発電した電力を自家利用し、電気代を抑える狙いも大きい。
ただ、パネルによる日陰が収量や品質に与える影響、景観や災害時の安全確保など、各地で議論も絶えない。営農が主で発電は従とする原則をどう守るかをめぐり、国はガイドライン整備やデータ収集を進めている。
その中で、薄膜太陽電池を使う山梨の試みは、果樹の品質向上と脱炭素を同時にねらう新しい選択肢だ。ただ、高価な太陽電池や蓄電池のコストを誰が負担し、何年で回収するのかという問いは残る。農家の追加収入源とするのか、公共投資として位置づけるのか――その設計次第で、ブドウ棚の上に広がる未来の景色は大きく変わっていくだろう。
