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ソフトバンクは2025年11月12日、積水化学工業と共同で、電源不要の透明“メタサーフェス反射フィルム”を使い、5Gのミリ波エリアを広げる実証結果を公表した。本社オフィスで圏外・弱電だった区画の改善を確認し、景観を損ねずにエリア拡大を図れる電波制御技術として手応えを得たとしている。駅や工場、イベント会場での活用も見据える。
オフィスの壁が“アンテナの道”になる
実証は、本社オフィスの壁面にあるポスターフレームを活用し、正反射タイプと偏反射タイプの2種類のフィルムを貼り分けて行われた。周波数は28GHz帯(5Gミリ波)だ。フィルムの有無で5Gミリ波の受信電力や通信速度を測定したところ、これまで圏外や弱電だったエリアで電波強度が上がり、実用的な改善が得られたという。
さらに、廊下の壁に両タイプを組み合わせ、反射を段階的に重ねる“多段反射”で電波を誘導。これにより、見通し外だった廊下奥のリフレッシュルームまで電波が回り込み、空間全体をエリア化できた。目立つ機器を増やさず、オフィスの景観を保てた点も評価された。
配線や電源の手当てが不要な点は、導入と保守の負担を軽くする。壁や什器の配置が変わるオフィスでも、貼り付け位置を調整するだけで電波の“通り道”を描き直せる。大掛かりな工事を避けながら、必要なところへ必要なだけ届ける設計がしやすい。
仕組みと利点
メタサーフェス反射フィルムは、微細な人工周期構造で反射位相を操る“メタサーフェス(メタマテリアルを用いた人工表面)”を備える。金属板のように「入射角=反射角」に縛られず、狙った方向へ電波を曲げられるのが特長だ。パッシブ構造(電源を使わない仕組み)で動作する。
透明・軽量・薄型で、曲面を含む壁やガラス、柱にも貼りやすい。掲示物や意匠と馴染みやすく、空間の印象を変えにくい点が、屋内配備では効いてくる。製品情報では2GHz〜150GHzと広い帯域に対応する旨が示されており、5Gのミリ波から将来の高周波まで見据えた素材設計となっている。
ミリ波は直進性が強く、遮へい物に弱い。一方で小型の中継器や分配アンテナは電源や設置スペースが課題になる。フィルムは電波の“経路設計”で死角を和らげる補完策となり、既存設備の上に静かに重なる。省エネで運用しながら、体感品質の底上げを狙える。
使いどころと次の一手
想定される活用先は、駅構内やイベント会場、工場や倉庫など、人と物の流れが読みにくい大空間だ。導線の変化や混雑の偏りに合わせ、反射経路を柔軟に設計できる。柱やガラスの陰、曲がり角の先といった見通し外へ、壁面を“静かな協力者”として配役できる。
周波数の高い無線ほど減衰が大きく、今後の6Gに向かうほど死角対策の重要性は増す。電力を消費しない素材で補完できれば、持続可能性の観点でも意味がある。実フィールドでは安全性や耐久性、清掃性など運用条件の検証が欠かせず、効果の定量化や設計指針の整備も進むだろう。
ソフトバンクは今回の結果を踏まえ、駅やイベント会場などでの活用検討を掲げる。多段反射の配置設計や最適化ツール、建築との協調ルールが整えば、貼るだけの“電波レイアウト”は現場の選択肢として定着していきそうだ。
静かな素材が、通信の道筋を少しずつ描き替えている。