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国務省の執務室で電話が鳴りやまず、担当者が次々と案件番号を読み上げた。2025年11月6日、同省の高官が明らかにしたところによれば、トランプ政権発足以降の非移民ビザ取り消しは約8万件に達し、飲酒運転や暴行、窃盗が大きな比重を占めるという。発給前だけでなく、有効中の管理にも手が伸びるいまの運用の姿が、数字ににじむ。
数字が語る取り消しの内訳
高官は、取り消し件数のうち飲酒運転に関連するものが約1万6000件、暴行が約1万2000件、窃盗が約8000件だと説明した。これら3類型で全体のほぼ半分を占めるとし、犯罪歴の把握と照合を強めた結果として、対象の抽出が加速していると述べた。非移民ビザは観光、商用、留学、就労など幅が広く、資格ごとに適用基準が異なるが、共通するのは「公共の安全」に関わる事実の有無である。
取り消しは入国前後の双方で起こり得る措置であり、審査過程で新たな情報が判明した場合や、入国後に犯罪が確定した場合にも発動される。領事担当官の裁量は法令とマニュアルに基づき限定されるが、照会先の拡充とデータの鮮度向上により、判断のスピードと件数が上向いた面は否定できない。数字は単独では語らないが、運用の重心が「迅速なリスク排除」に寄っていることはうかがえる。
広がる審査強化と現場の変化
政権は発給段階での審査を段階的に強化してきた。ソーシャルメディア情報の取り扱いはその象徴で、本人同定や交友圏、渡航歴の把握に活用する場面が増えている。発給後のモニタリングでも、刑事手続の進展や保安情報の更新に応じて適格性を再評価する体制が整えられつつある。可視化されにくい領域だが、領事現場には「確認のための確認」が積み重なっている。
面接免除の範囲見直しなど、手続そのものの厳格化も同時に進む。年齢や更新条件にかかわる例外は残るものの、原則として対面での聴取を優先し、疑義があれば追加書類や再面接を求める運用が定着してきた。対象国を限定する入国・発給制限の発動も、領事線の負荷を押し上げる。手間は増えるが、審査の密度を高めることが最終判断の説明可能性を支えるというのが当局の論理である。
学生ビザにも波及する動き
学生ビザでも取り消しが相次いだ。8月には、滞在期間の超過や法令違反を理由に6千件超の取り消しがあったと当局が説明している。一部では「テロ支援」に関連づけた判断も含まれたといい、学校側の対応や奨学金の継続にも影響が及んだ。学業の継続性という観点と、安全保障・公共の安全という観点が、領事の窓口で交差する構図である。
審査の厳格化は、違反抑止のメッセージであると同時に、現場の実務にも余波を広げる。大学は在籍確認の頻度を上げ、学生は渡航計画の立て直しを迫られる。領事館は件数増に耐える運用の微調整を続ける。制度の歯車がかみ合うほどに、数字の裏側にいる人の時間や選択が静かに書き換えられていく。その変化の歩幅は大きくないが、確実に積み上がっているように見える。
