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米国の経済学者にとって最大の学会が、一人の大物に門戸を閉ざした。米財務長官や米名門大学の学長を務めたローレンス・サマーズ氏が、性犯罪で有罪となった金融家ジェフリー・エプスタイン元被告との関係を理由に、米国経済学会(AEA)から終身で排除された。今年12月2日の決定は、専門職の倫理と「師弟関係」のあり方を問い直している。
若手研究者が感じる「師弟関係」への不信
AEAは2日の声明で、サマーズ氏の会員資格の辞任を受理し、今後一切の会合出席や講演、学会誌への関与を認めない終身制裁を科したと公表した。声明は、各紙が報じたエプスタイン氏とのメールなどのやり取りが、経済学者に求められる職業的な誠実さや、指導教員への信頼と両立しないと厳しく断じている。
AEAは会員数1万7千人超を抱える世界最大級の経済学会で、主要な学術誌と年次大会を運営する。サマーズ氏はかつて40歳未満の優秀な研究者に贈られるジョン・ベイツ・クラーク賞を受けた「スター研究者」でもあり、その人物が学会から名指しで排除される事態は、若手にとって学界の権威と倫理のどちらが重いのかを象徴的に示した。
エプスタイン氏は未成年者に対する性犯罪で有罪判決を受け、2019年に勾留中に死亡している。その被害者や、ハラスメント問題に敏感な若手研究者にとって、指導的立場の学者が関係を断たなかった事実は大きな痛手だ。日本の大学でも指導教員による不適切な言動が問題化しており、師弟関係をどう安全に保つかは他人事ではない。
学会が重い一線を引いた背景
今回の判断のきっかけは、米議会下院の委員会がエプスタイン氏の遺産資料から2万点超の文書を開示し、その中にサマーズ氏との継続的なメールが含まれていたことだと、AP通信やハーバード大の学生紙「クリムゾン」が伝えている。2008年の有罪判決後も親しい関係が続き、若手女性研究者との私的な関係について助言を求める場面もあったという。
AEAは近年、セクハラや差別の告発を受けて行動規範やハラスメント禁止ポリシーを整備し、会合でのふるまいも厳しく定めてきた。今回の声明でも、学会は安全で包摂的な環境を維持する責務を強調し、メンバー全員に行動規範の順守を求めている。単なる私交ではなく、指導的地位にある者のふるまいが若手に与える影響を重く見た判断といえる。
エプスタイン氏との関係を巡っては、サマーズ氏は11月以降、米有力大学での教壇や研究センターの責任者の職を離れ、シンクタンクや国際会議の役職、さらにOpenAIの取締役など公的な肩書を次々と手放している。ガーディアン紙やフォーチュン誌、ポリティコによれば、本人は「深く恥じている」と述べ、公的活動から距離を置く考えを示しているが、学会による終身処分はそれ以上に重い烙印となった。
日本の学会が学ぶべき教訓
一方で、過去の行為へのさかのぼり制裁には、表現や研究の自由との線引きをどう考えるかという難題もある。AEAは個別案件の詳細には触れておらず、処分の基準がどこにあるのかは外からは見えにくい。それでも、長年の功績があっても倫理違反には厳しく対処するというメッセージは、被害者や若手研究者の側に立ったガバナンスのあり方として注目される。
性加害やハラスメントをめぐる意識の変化は、日本の学会や専門職団体にも押し寄せつつある。海外の動きに学びつつ、通報窓口や調査手続きの透明性、処分の公表範囲などをどこまで整えるのか。サマーズ氏の終身追放は、一人の著名学者の失墜というより、研究コミュニティ全体が信頼を守るためにどこまで踏み込めるかを映す鏡になっている。
著名人の処遇に揺れる海外の議論は、肩書きや功績よりも、日々の指導や研究の場で誰の安全と尊厳を優先するのかという問いを、私たちにも静かに突きつけている。
参考・出典
- Statement from the American Economic Association
- Larry Summers receives lifetime ban from prestigious economic association over Epstein ties | News Channel 3-12
- American Economic Association Imposes Lifetime Membership Ban on Summers Over Epstein Revelations | News | The Harvard Crimson
- ‘Deeply ashamed’ Larry Summers steps back from public life over Epstein links | Jeffrey Epstein | The Guardian
- American Economic Association imposes lifetime membership ban on Lawrence Summers
- Larry Summers steps down from OpenAI board over Epstein ties
