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秋晴れの空に銀色の屋根が連なり、駐車する車の列にやわらかな陰が落ちる。奈良県大和郡山市のイオンモール大和郡山で、Sun Trinity合同会社が手がける大規模ソーラーカーポートが稼働を始めたのは2025年10月17日 10:00である。商業施設として日本最大規模とされ、再エネの「見える化」を伴う動きが一段と加速していると映る。
駐車場が発電所になる、その日常の景色
モールの駐車区画を覆うのは、パネルが並ぶ長い屋根だ。駐車場1004台分のスペースに設けられ、出力は約3.1メガワットに達する。買い物客が行き交う足元で、屋根は静かに電力を生み、建物の年間消費電力の約20％を賄う計画である。日常の風景のまま、施設の電力の一部が敷地内で完結する構図が浮かぶ。
今回導入されたカーポートは、商業施設向けとして日本最大規模とされる。規模の大きさは数字に現れるが、体感としては暑い日の日よけ、雨天時の雨よけという利便にも直結する。駐車時のストレスを減らしながら、CO2フリーの電気を生み出す二重の効果が、来場者の体験と施設運営の双方に波及していくとみられる。
電力の取引形態はオンサイトPPAである。需要家は初期投資を伴わずに再エネ電力を調達でき、供給側は発電設備の運営を担う。価格変動の大きい電力市場の局面において、長期の安定調達と脱炭素の両立を図る実装例として位置づけられ、販促用の告知だけでなく施設の基盤を支える存在感が増していると映る。
包括契約が押し出す連続導入、広がる再エネの足場
この稼働は、2024年1月11日に発表されたイオンモールとSun Trinityの「日本最大規模の包括ソーラーカーポート・オンサイト太陽光PPA契約」に基づく取り組みの一環である。現時点で確認されている範囲では、両社は商業施設の屋外駐車場を再エネの主戦場と位置づけ、導入を面的に進める方針を共有している。今回の奈良での始動は、その象徴的な節目と言える。
同社は2025年8月、岐阜県のイオンモール土岐で約1.9メガワットのソーラーカーポートを稼働させ、既設の屋根置き約2.8メガワットと合わせて合計約4.7メガワットのオンサイト発電体制を築いた。建物の年間消費電力の約40％を賄う見込みとされ、施設ごとに組み合わせを最適化する実装の知見が蓄積されている様子がうかがえる。
構造面でも工夫がにじむ。建築基準法上の強度基準に適合させつつ柱の本数を抑えて駐車時の干渉を減らし、雨樋と架台を一体化した特許構造で雨漏りを防ぐと説明される。安全とデザインを両立させ、配線の露出を抑えるなど来場者動線への配慮も重ねる。駐車場という既存空間を壊さず、発電と快適性を共存させる設計思想が広がっていると映る。
Sun Trinity合同会社は東京都千代田区を拠点とし、住友商事と四国電力が出資する太陽光発電事業会社である。大和郡山の稼働開始からは、商業施設の電力を敷地内で部分的にまかなう「地産地消」の輪郭が具体化してきたことが読み取れる。駐車スペースが発電所へと姿を変え、消費地のすぐそばで電気が生まれる時代が現実味を帯びてきた。
