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捜査員が押収したPCの解析結果が、事件の輪郭を浮かび上がらせた。2025年11月11日、兵庫県警は楽天モバイルのシステムに不正接続して通信回線を契約したとして、埼玉県の16歳少年と21歳の男を不正アクセス禁止法違反などの疑いで再逮捕した。少年は生成AIを用い、自動で回線を契約するプログラムを作ったと供述している。利便性に寄り添う設計の影で、手口は静かに高度化していた。
自動化された手口が示すもの
捜査関係者によると、少年は他人の楽天IDとPWを使いログインし、楽天モバイルのeSIM（スマホ内蔵型の加入者識別情報）を契約する作業を自動化していた。解析では約150万件のIDやPWのリストが見つかり、海外サイトで約50ドルで入手したと説明したという。実行の速度と量を押し上げたのは、入力や画面遷移を機械に任せる発想だった。
当初は手入力で契約を繰り返していたが、匿名性の高い通信アプリとされるTelegram（テレグラム）で得た情報を手がかりに、対話型の生成AIサービスであるChatGPTを使って自動入力するプログラムを作成したとされる。プログラムは契約画面の遷移と入力を繰り返し、短時間で複数の回線を確保できたとみられる。操作は単純でも、繰り返しに強い機械に置き換わると景色が変わる。
入手した回線はSNS上で知り合った21歳の男が1件約1000円で売却し、役割分担が成立していた。2人は2025年10月にも同様の手口で計10回線を契約した疑いで逮捕されており、今回の再逮捕は昨年春に行われたとされる別件の10回線契約に関するものだ。資金の流れや指示系統、作成プログラムの改変履歴まで、捜査は丁寧に積み上げられている。
制度のすき間と広がる摘発
事件当時、楽天モバイルは1つの楽天IDにつき最大15回線まで契約でき、本人確認書類を登録済みのIDであれば再提出は不要だった。利便性を高める設計が、流出したIDやPWを悪用する者にとってもハードルを下げる結果になった可能性がある。契約プロセスの正当性確認をどこで強化するか、事業者の設計判断が試されている。
同社の回線を巡っては、2025年2月以降、生成AIを悪用して不正接続し契約したとして複数のグループが摘発されている。今回の再逮捕は、個々の模倣ではなく、方法が共有され自動化が進む連鎖の一端を映す。技術が個人の手に渡る速度に対し、監視や認証の更新サイクルをどう早めるかが焦点だ。制度は利便と防御の揺れ幅の中で調整を迫られている。
一般に、IDとPWが前提となる認証では、多要素認証の徹底や、短時間での契約回数や変更回数に上限を設ける動的な監視が有効とされる。eSIMの無人発行が広がる中、端末や支払い手段とのひも付けをどう精緻化するか、事業者とプラットフォームの対策は重ねられていくとみられる。利用者も不審な契約通知に気づいた段階で早期の確認と停止手続きが要る。
静かな画面の裏側で、契約ボタンを押す手は人から機械へ移り、守りの設計は次の更新を待っている。
