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発火事故が相次ぐモバイルバッテリーをめぐり、経済産業省は2025年10月21日、中国企業系の日本法人アンカー・ジャパンに行政指導を行った。販売事業者への行政指導は初とされ、年内をめどに全製品の点検と製造・品質管理体制の報告を求める。事故の連鎖を断つために、監督の網を一段と細かくする狙いが浮かぶ。
相次ぐ発火、最大手への指導が映すもの
通勤電車の車内、机の上、宅配ボックスの奥――黒く小ぶりな電源は、日常のどこにでもある道具になった。一方で、国内では発火や破裂の報告が絶えない。経済産業省は21日、こうした事故の多発を受けてアンカー・ジャパンに行政指導を実施した。現時点で確認されている範囲では、販売事業者に対する措置として初のケースとみられる。
行政指導は、年内を目安に全製品の点検計画や実施状況、製造・品質管理体制の詳細な報告を求め、原因究明と再発防止の実効性を点検する内容だ。対象は同社が国内で販売するモバイルバッテリーをはじめ、リチウムイオン蓄電池を搭載した周辺機器まで広がる。省内では、販売実態を踏まえて監督の目を製造・流通の両面に据える判断と映る。
アンカーはモバイルバッテリー市場で存在感が大きい。民間調査によれば販売台数シェアは3割超とされ、量の多さが事故数の見え方を左右してきた側面もある。ただ、製品の不具合が累積している現状は看過できないとして、経済産業省は監督強化に踏み切った。初の行政指導が示すメッセージは、業界全体への警鐘でもある。
自主回収の範囲と原因、企業が語ったリスク
同社は21日、2022年12月以降に販売したモバイルバッテリー約41万台と、リチウムイオン蓄電池内蔵のスピーカー約11万台の自主回収を発表した。製品から発火した重大製品事故として、経済産業省に41件を報告していたという。製造工程で電極体を切断する際に生じる粉じんが混入し、内部でショートを招くおそれがあると説明した。
これとは別に、同社は2019年7月以降、モバイルバッテリーを中心に8回の自主回収を重ね、計約50万台の対象が生じている。累計では約100万台規模にのぼる不具合が積み上がった格好で、行政側は事態の重さを強く受け止めたとみられる。現時点で確認されている範囲では、販売量の多さに比例する偶発では説明しきれない連続性が浮かぶ。
同社は専用窓口を設け、対象製品の無償回収・交換に応じている。問い合わせ先は0120-775-171。ユーザーには使用の中止と通電の回避、保管時の遮熱・防湿の徹底を求めている。事故の端緒は小さな違和感から生まれることが多い。膨らみ、異臭、発熱、充電異常などの兆候があれば、ただちに利用を止める判断が重要である。
規制の現在地とこれから、業界全体への波及
小型二次電池の自主回収とリサイクルは、すでに資源有効利用促進法に基づき事業者へ義務づけられている。対象にはモバイルバッテリーも含まれる。今回の行政指導は、その枠組みの上に立って実効性を点検し、品質管理の徹底と事故情報の共有を一段押し上げる狙いがある。制度の存在だけでは事故は減らないという現実がある。
経済産業省は、アンカーからの報告内容を検証し、同種製品を扱う他の事業者にも品質管理や表示の徹底を促す考えだ。国内流通の多くを占める海外製品、とりわけネット通販で流通する低価格品の品質ばらつきに、どう網をかけるか。行政と事業者の共同作業が欠かせない局面に入ったといえる。
ユーザー側の備えも重要だ。落下や打撃、直射日光下での放置、非対応充電器の使用は避けるべきである。廃棄の際は自治体のルールに従い、一般ごみに混ぜない。身近な便利さの裏側にある化学的リスクを、誰がどう分担して抑え込むか。今回の「初の行政指導」は、その問いを業界と社会全体に投げかけていると映る。