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押収されたスマホや通帳、キャッシュカードの束が机に並び、会見場に静かなざわめきが広がった。国内最大級とされる口座売買のブローカー集団が摘発され、男女7人が逮捕された。銀行や暗号資産の口座をスマホごと仕立てて横流しする「道具屋」の要だったとされ、特殊詐欺の出口を塞ぐ一撃となったと映る。事件は詐欺の供給網の実像と、その切断がもたらす波紋を示している。
口座ブローカー摘発で何が崩れたのか
2025年10月16日、警察は国内最大級とされる口座ブローカー集団の拠点を捜索し、リーダー格を含む男女7人を逮捕した。報道によれば、容疑は名義人から預金口座を買い取り、スマートフォンと紐づけたうえで譲り受ける手口で、特殊詐欺グループに横流ししていたという。年間およそ1000口座を渡していたとの説明もあり、少なくとも1億円規模の被害につながった可能性が指摘されている。容疑の一部を認める供述も出ていると伝えられている。
集団は、名義人に端末の契約やアプリ設定まで行わせ、ワンタイム認証や本人確認の隙を突いて管理権限を握る。完成したスマホと口座の「セット」は売買単位となり、カードや暗号資産口座と束ねて転売される構図だ。従来、口座の買取価格は数万円規模とされてきたが、用途が広く限度額の大きい口座や暗号資産口座が絡むセットは高値で流通したとみられる。口座は消耗品のように回り、詐欺の資金移動を支える装置となっていた。
今回のグループは「雨グループ」とも称されたと報じられ、国内外に販路を持つことが強みだったとされる。中国系の詐欺ネットワークへの転売の疑いにも言及があり、SNS上で被害が多発する投資名目の詐欺などで、送金先や資金洗浄の回路として使われた現実が浮かぶ。供給のハブが断たれたことで、実行役の募集から回収、送金までの一連の流れに負荷がかかるのは避けられない状況である。
匿流に挑む新体制、首謀者に近づく
10月1日、警察庁は「匿流情報分析室」を設置し、全国の事件情報を集約して中核人物を割り出す体制を動かした。警視庁も同日、「匿流対策本部」を新設し、約140人の専従体制に全国46道府県警からの応援を加え、戦略的に摘発を進める方針を示した。いわば頭脳(分析)と腕(実働)を結ぶ仕組みで、SNSで緩くつながる「匿名・流動型」の犯罪グループの要を突く狙いが色濃い。首謀者を必ず検挙するという気迫がにじむ。
報道では、来春までに約200人体制へ拡充する構想も示され、全国の捜査力を首都圏に集める集中的な布陣が描かれている。末端の実行役だけでなく、口座ブローカーや闇の端末業者、換金役らを束ねる「中枢」へ迫るには、情報の統合と迅速な可視化が欠かせない。今回の摘発が新体制の直接の成果かは現時点で断言できないが、押収データの横断分析と現場の連携が奏功した場面は多かったとみられる。
一方で、口座の供給網は細分化し、少人数の「道具屋」に分散して潜る動きも広がるだろう。価格の下落やルートの分断を補うため、暗号資産口座やデジタル決済アカウントの複合セット化が進む懸念もある。だが資金の出口が細るほど、欺罔行為の収益化は難しくなる。被害の多発するSNS型投資詐欺でも、送金先の確保が詰まれば拡大は鈍るはずだ。捜査の網が重層的に掛かるいま、芋づる式の摘発が次の段階へ進む光景が見えてくる。