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秋田県湯沢市の中心部で、住宅に入り込んだクマがとどまり続けている。2025年10月20日の早朝、男性4人が相次いで襲われてから2日。市と猟友会は玄関先に箱わなを据え警戒を続け、22日の朝には警察が物音を確認したが、捕獲には至っていない。学校現場でも送迎の呼びかけや屋外活動の見直しが広がり、市街地の不安が長引いていると映る。
住宅に居座るクマ、中心部で起きた数時間
20日朝の湯沢駅周辺は、普段の通勤時間帯とは違う緊張が漂っていた。住宅の玄関前には警察官が立ち、通り過ぎる車が速度を落とす。20日10時30分ごろには、玄関先で警戒に当たる姿が見られ、住民は足早に家路を急いだ。市街地のど真ん中で、野生の大きな影が日常を押しのけた光景が浮かぶ。
異変は20日5時05分に始まった。元清水の市道で63歳男性が背中を引っかかれ、5時40分には表町で散歩中の56歳男性が左腕をかまれた。さらに5分後、材木町のホテル駐車場で70歳男性が負傷し、6時20分ごろには表町で65歳男性が襲われた。現場はいずれも湯沢駅から半径1キロ圏内で、4人はいずれも命に別条はないとみられる。
最後に襲われた男性の自宅に、クマはそのまま入り込んだ。住人の証言では、突然の飛び付きで転倒した後にクマが屋内へ向かったという。市は緊急銃猟の実施を見送り、玄関に箱わなを設置する方針に切り替えた。市街地という環境で、暴発的な対応を避けながら安全確保を図る苦渋の判断がにじむ。
続く警戒と市民生活
捕獲作業は「待つ」局面が続く。市と猟友会は住宅の玄関先に箱わなを置き、米ぬかやハチミツを使って誘引を試みるが、クマは警戒を解いていない。屋内に居座ったまま刺激せずに誘い出す作戦で、22日朝には警察が物音を確認したが、決定打にはつながらなかった。長期戦の様相が広がっている。
教育現場にも余波は及ぶ。近隣の小学校では保護者への送迎依頼が出され、児童の動線を短くする対応が取られた。屋外活動を控え、校内の見回りを増やすなど、日常の運用を細かく積み替える学校が目立つ。危険が視界に入りやすい市街地で、子どもの安全を手堅く守るための小さな工夫が積み重ねられているとみられる。
地域の店や職場でも警戒が続く。開店前の見回りを強める店舗、通勤ルートを変える会社員、夜明け前の散歩を控える住民。目撃情報や広報車のアナウンスは飛び交うが、住宅に居続ける1頭が捉えられない限り、街に落ちた影は薄れない。捕獲の糸口が見えるまで、緊張は街のリズムを縛り続けると映る。
広がる周辺の動きと今後の視点
湯沢の周辺でも警戒は強まる。21日夜からは横手市の寺で親子とみられる3頭が確認され、22日朝には子グマとみられる1頭が川に移動したものの、ほかの2頭は敷地にとどまっているとされる。市街地へ繰り返し姿を見せる個体が増えれば、広域の連携と現場の即応力が問われる局面が続くとみられる。
一方で湯沢市は緊急銃猟を見送り、箱わな中心での捕獲に軸足を置いた。住宅に入り込んだままの個体に対し、無用な刺激を避けながら住民の安全と確実な捕獲を天秤にかける判断である。市街地の複雑な動線や人の往来を考えれば、発砲に伴う二次被害の回避を最優先する選択は合理的とも映る。
当面は「待つ」作戦と地域の足並みが鍵になる。学校や事業所、自治会の連絡網を詰め、見回りの目を増やしつつ、むやみに近づかない・集まらない原則を徹底する。住宅に居座る個体の動きがわなへ向かうのを辛抱強く待ち、万一外へ出た場合の迂回導線や一時待避の場所をイメージできるかが、街の安全度を左右するといえる。
