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柿の実が色づく庭先で、静かな朝が一変した。2025年10月26日、富山と秋田で高齢の女性2人がクマに襲われ、けがを負った。暮らしの場に近い場所で相次いだことが重い。富山県は同日、出没警報を発令し緊急会議の開催を決めた。秋田では一部報道で知事が自衛隊派遣の要望を示唆したとの情報もある。季節の家仕事が危険に変わる秋、本当に守るべきものは何かが問われている。
ひとけのある庭先で起きた襲撃
26日午前10時15分ごろ、富山県南砺市山本で、親戚宅の柿の木で実を採っていた70代女性がクマに襲われた。右前腕と右側頭部に咬傷を負い、病院に搬送されたが軽傷とされる。作業は自宅や畑と地続きの延長にある日常で、朝の光の下でいつも通りに手が動く時間帯だった。そんな場所で起きた咄嗟の一撃に、生活圏と野生の距離の近さが浮かぶ。
富山県は同日付でツキノワグマ出没警報（第5報）を発令し、加害個体の捜索と地域パトロールを市や捕獲隊、警察と連携して進めている。県によれば、今年度の人身被害は4例目で、10月下旬に入ってから事故が続いたという。28日10時から県民会館で庁内や市町村が集まる緊急対策会議を開く予定だ。生活の場を守るための網の目を、いま一段きつく結び直す局面と映る。
秋田・鹿角での一撃と、続く不安
同じ26日、午前9時前の秋田県鹿角市八幡平でも、85歳の女性が自宅敷地内の水場でダイコンを洗っていた際、体長約1.2メートルのクマに背後から襲われたと一部報道は伝えた。女性は後頭部などを負傷し、市内の病院に運ばれたが意識はあり会話もできる状態とされる。台所仕事の延長にある洗い場で、音もなく忍び寄るリスクが現実のものとなった。
鹿角警察署は、管内の国有林の一部で入山禁止の周知を続け、クマ鈴やラジオでの音出し、出没情報の事前確認、撃退スプレー携行など遭遇回避の行動を呼びかけている。住宅地の縁や水場、畑の端は、野生動物にとっても通り道になりやすい。人の生活音が薄まる早朝や日没前後は特に警戒が必要だろう。現時点で確認されている範囲では、知事が週明け早々にも防衛省を訪れ自衛隊派遣の検討を要望する考えを示唆したとの情報もあり、緊張は地域に広がっている。
庭の秋を守るために
富山県は柿の実を除去する際の具体策として、ひとりで作業しない、出没情報があるときは行わない、ヘルメットなど防御できる装備を付け短時間で済ませる、の三点を挙げる。加えて、家の周りの生ゴミや収穫物は屋外に放置せず、納屋や倉庫は施錠する。庭木や畑が秋の恵みを宿すほど、匂いと音は遠くからも生き物を引き寄せる。暮らしを守る小さな手順の積み重ねが、遭遇の確率を下げる。
秋田県警は市街地でも音を出す工夫や複数人での行動を促す。作業は明るい時間帯に切り上げ、子どもや高齢者は目の届く範囲で。地域の見回りや学校・町内会での共有も力になる。28日に予定される富山の緊急会議の行方や、秋田の動きがどこへ収束するかはまだ見えない。それでも、今日の作業をもう一人と一緒に、という小さな選択から、庭の秋を安全に越える道が開けるとみられる。
