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拍手が広がるなか、李強首相が数字で会場を静かに引きつけた。中国経済は2030年までに170兆元を超える—上海で始まった中国国際輸入博覧会の開幕式で、こう見通しを語った。関税への懸念と制度改革への意欲を並べ、中国はより開かれた市場で世界に機会をもたらすと強調した。輸入拡大や制度の整備を軸に、減速懸念が漂う世界に向けたメッセージを重ねた。
上海の開幕式で示した数字の重み
2025年11月5日、李氏は基調演説で「5年後には」と前置きし、2030年に170兆元の経済規模を見込むと明かした。今年のGDPが140兆元を超えるとの政府方針も添え、足元から中期の道筋を一枚のチャートのように提示した。市場には、減速懸念の中での前向きなシグナルとして映った。
数字は国内だけの話ではないと李氏は繰り返した。巨大な需要を世界に開き、高品質な製品の輸入を増やすと述べ、外資にとっての可視性を高める姿勢を示した。会場では供給側の強さだけでなく、需要側を厚くする意思が強調され、展示ブースの商談にも熱が入った。
外から見れば、住宅や投資の波形が重くのしかかる。今年の見通しを積み増す形で、政府は制度面の開放を前面に出した。外資が「安心・快適・自信」を持てる環境を掲げ、資本と人の往来を滞らせないと語る。会場の拍手は、期待と慎重さが交じる音色だった。
関税批判とルール作りへの布石
李氏は名指しは避けつつ、関税が国際ルールを損ない、各国企業の正常な事業を乱していると指摘した。ことしは「関税が見出しになった」と述べ、通商のガバナンスを補強する必要性を強調。途上国にとって合理的で透明な仕組みづくりを掲げ、制度設計の土台に踏み込んだ。
背景には、主要市場での障壁強化や相互の報復措置がある。中国側は多国間主義への回帰を促し、相互の約束を履行する規範を再確認したい考えだろう。関税応酬の短期的な揺れより、秩序の再構築に軸足を置く構図が浮かぶ。
もっとも、産業政策や安全保障をめぐる線引きは容易ではない。各国の国内事情が交錯するなかで、開放と保護の間のバランスは揺れ続ける。上海のホールに流れる企業の説明は軽快でも、規制の文言は重い。調整の時間が、商談の速度を試す。
開放のメッセージと会場の熱気
輸入博覧会は11月5日から10日まで開催される。主催者によれば、参加は155超の国・地域・機関、海外企業は4100社超に及ぶ。米国企業は7年連続で最大の展示面積を維持し、政治の緊張と商談の現実が交差する。通路では各社の調印式が次々と続いた。
李氏は質の高い製品の輸入拡大を掲げ、ビジネスと貿易の門戸を開くと重ねた。来場した担当者は、手続きの明確化やデータ移転の可視性など、具体の改善を注視している。期待は大きいが、履行の一歩ごとが信頼を形にする。掲げた言葉が、来年の契約書に映るかが問われる。
巨大な展示場では、最新の装置と食品が並び、実演の拍手が途切れない。数値は大きく、約束は滑らかだ。残るのは、通関から決済までの小さな摩擦をどこまで減らせるかという手触りだろう。会場を後にする人の足取りに、その確かさが宿る。
